2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular crystal imprinting for rapid formation of cocrystal
Project/Area Number |
20K21105
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
下山 裕介 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30403984)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 共結晶 / 高圧二酸化炭素 / 分子結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
難水溶性の医薬物質の溶解性促進に向けた共結晶の形成において,高圧CO2を媒体とした共結晶形成の高速化プロセス設計に関する研究を実施した.医薬物質であるtheophyllineを,共有体としてnicotinamide,saccharin,ureaを用い,高圧CO2中に静置することで共結晶を形成させた.当初は,高圧CO2が有する溶解性と,分子結晶内への高い浸透性を利用することで,医薬物質の共結晶形成を計画していたが,高圧CO2中における医薬物質の拡散性,分子結晶の表面における結晶構造の緩和が不十分であることが確認された.そこで本研究では,高圧容器内に球形ビーズを導入し,高圧CO2中において医薬物質ならびに共有体の粉末を粉砕させた状態で,共結晶を形成させるプロセスを構築した.粉砕を導入した高圧CO2中では,theophyllineの共結晶化が促進することが確認された.さらに,容器内に導入した球形ビーズの充填率が,theophyllineの共結晶化へ及ぼす影響について検証した.その結果,球形ビーズの充填率が25%までは,充填率の増大に伴い共結晶化が促進することがわかり,25%より高い充填率では共結晶化の促進が確認できなかった.また,高圧CO2に対する共有体の溶解度と,theophyllineの共結晶化との関連性についても検証した.その結果,高圧CO2に対する溶解度が低い共有体に対して,球形ビーズの導入は,共結晶形成に対して,高い促進効果を示すことがわかった.以上より,高圧CO2が有する溶解性と,球形ビーズによる医薬物質粉末の表面における摩擦効果が,共結晶の形成促進に影響することが示唆された.以上より,本年度は,分子結晶インプリンティング技術において,高圧CO2中にける粉砕を導入することで,医薬物質の共結晶化を促進することが明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,高圧CO2における医薬物質の共結晶形成において,高圧CO2が有する溶解性と,分子結晶内部への浸透性を利用することで,共結晶形成の促進ならびに高速化を目的とする.高圧CO2内に共有体分子を溶解させ,医薬物質の分子結晶内へ侵入させることで共結晶を形成することを提案していた.しかしながら,高圧CO2中への溶解のみでは,医薬物質の分子結晶表面における結晶構造の緩和が不十分であることが示唆され,共結晶形成の促進が小さいことが確認された.そこで,球形ビーズを高圧容器内へ導入し,マグネティックスターラーで容器内を攪拌することで,医薬物質ならびに共有体の粉末を粉砕することで,高圧CO2中における分子結晶表面の結晶構造の緩和を図った.その結果,粉砕を導入した高圧CO2により,theophyllineの共結晶形成が促進されることがわかった.このように,粉砕法を導入した高圧CO2中での共結晶形成プロセスに対して,球形ビーズの充填率,ならびに高圧CO2に対する共有体の溶解度と,theophyllineの共結晶形成との関連性について検証を行った.球形ビーズの充填率が及ぼす影響について,高圧容器内の充填率が25%までは,充填率の増大に伴い,共結晶の形成率も増大することを把握した.また,高圧CO2に対する共有体の溶解度が及ぼす影響については,溶解度が低い共有体との共結晶形成に対して,球形ビーズによる粉砕の効果が大きいことがわかった. これまでに,分子結晶インプリンティングを利用した共結晶形成に対して,高圧CO2中での粉砕法を利用した共結晶形成プロセスを構築し,粉砕法を導入した高圧CO2中での共結晶形成プロセスに対して,球形ビーズの充填率,ならびに高圧CO2に対する共有体の溶解度と,theophyllineの共結晶形成との関連性を定量的に把握している.
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Strategy for Future Research Activity |
高圧CO2における医薬物質の共結晶形成において,高圧CO2が有する溶解性と,分子結晶内部への浸透性を利用した,共結晶形成の促進ならびに高速化に関して,本年度に考案した球形ビーズによる粉砕法を用いた高圧CO2による共結晶形成プロセスを,今後も引き続き適用する.粉砕法を適用した高圧CO2による共結晶形成プロセスに対して,球形ビーズの充填率,高圧CO2に対する共有体の溶解度が及ぼす影響に加えて,今後は球形ビーズの大きさ,温度,攪拌速度等の他の操作因子の影響についても定量的に把握し,共結晶形成プロセスの設計および操作条件の最適化を念頭にした基礎データを蓄積していく.このような実験的アプローチに加え,対象とする医薬物物質に対して,共結晶を形成する共有体を迅速に選定する理論手法の確立を図る.具体的には,量子化学計算から得られる分子情報を入力した機械学習法を構築し,対象とする医薬物質に対して,共結晶形成が可能となる共有体を選定する手法を確立する.また,医薬物質の共結晶形成において,現状の課題である分子量の大きな医薬物質の共結晶形成にも,本研究課題で考案した,球形ビーズによる粉砕法を用いた高圧CO2による共結晶形成プロセスを展開し,医薬物質同士の共結晶形成を促進ならびに高速化する形成プロセスを構築する.
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Research Products
(3 results)