2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21107
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
渡部 綾 静岡大学, 工学部, 准教授 (80548884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 極限環境触媒 / 氷点下領域 / 熱電変換 / 核磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
氷点下領域で機能する触媒の開発は,これまで注目されてこなかった。それは,反応場の副生水が凍結し,触媒反応場を阻害して著しい劣化を進行させるためである。本研究では,この凍結水を過冷却現象で回避し,氷点下領域の過酷な環境においても優れた機能性を発揮する極限環境触媒システムの創製に挑戦する。具体的には,冷蔵・冷凍庫内における汚染ガスの一つであるリモネンの分解除去反応を題材に,熱電変換効果と核磁気共鳴を協奏的に利用することで非凍結性水分子を創生しつつ,触媒速度の加速により極限環境下の物質変換を実現する。前年度は,リモネンの分解除去システムを構築し,装置の健全性を把握を実施した。さらに触媒の機能性評価を行ない,白金系触媒が分解反応を進行することを明らかにした。今年度は,熱電変換素子への白金系触媒の担持と,熱電変換効果による触媒反応の加速を試みた。予め成形されている市販のビスマス系熱電素子に白金成分をスプレーコートして触媒を調製し,そのリモネン分解特性を評価した。触媒成分の担持法としてスプレーコート法を採用することで比較的均一に金属成分を担持できることがわかった。さらに,調製した触媒はリモネンの分解反応に活性を示すことが明らかになった。続いて,この熱電素子材に温度差を印加し触媒性能を評価したものの,温度差を与えない場合と比較して性能に大きな違いは確認されなかった。これは熱電素子内部に温度勾配が形成されなかったために十分な熱電変換効果が発揮されなかったためである。熱電素子の伝熱機構と放熱機構の改善により,触媒機能性の向上が期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初に期待していた熱電変換効果による貴金属触媒のリモネン除去性能の加速は,現状のシステムでは発現しなかった。また磁場印加による触媒安定性の改善の検証には至っていない。研究推進にやや遅れが生じているものの,困難と考えられる熱電素子への触媒成分の担持はスプレーコート法を採用することにより既に達成している。調製した触媒に適切な温度勾配を形成させることにより熱電変換効果の発現と分解反応の加速が期待され,熱電素子表面および素子内部の伝熱機構および放熱機構の抑制することで温度勾配の形成が必要である。このような対策を講じることにより,令和四年度の早期に遅延を取り戻せるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和四年度の前期間においては,熱電変換効果により反応の加速効果を再検証する。熱電変換素子における伝熱機構および放熱機構を抑制して温度勾配の形成を促進し,反応の加速を達成する。また令和四年度の後期間では,氷点以下における触媒の除去特性を把握して安定性評価を実施し,触媒劣化の要因を明らかにする。熱電変換効果により触媒の反応性や安定性に及ぼす効果を検討し,低温側の反応場は室温に設定し,高温側の温度を上げて,温度差を拡げる。温度差の拡張により熱起電力を増幅し,温度差の有無が反応促進や安定性に効果的であるか検討し,安定性の改善が見込めない場合には磁場を印加して反応を実施する。磁場周波数や磁場強度を調節して触媒劣化に与える影響を調べ,核磁気共鳴が良好な性能を示す要因であることを明らかにする。
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Causes of Carryover |
令和三年度に予定していた磁場印加によるリモネン分解除去の開発が遅延し,次年度も継続して開発することになったためである。当初予定していた温度差印加による熱電変換効果により反応の加速を期待していたが,予想に反して触媒内部に温度差が形成されず,良好な反応成績が得られなかった。次のステップである磁場印加による触媒反応システムの開発は,これまでにほとんど報告例がなく,新規な反応系である。次年度は熱電変換効果に基づく反応促進効果を再検証し,その後磁場印加による触媒システムを構築することで,予算を執行できるものと考えられる。
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