2021 Fiscal Year Annual Research Report
力検出を用いた近接場光学顕微鏡の超高分解能化と有機分子の原子分解能観察の機構解明
Project/Area Number |
20K21128
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅原 康弘 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40206404)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 近接場光学顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、物質表面の個々の原子を原子分解能で観察可能な次世代の光学顕微鏡を実現すると共に、その原子分解能観察の機構を解明することである。 まず、近接場光を高分解能に測定するために制限している因子(例えば、近接場光から力への変換効率や、カンチレバーの変位検出計の雑音、カンチレバーの熱振動、カンチレバーのバネ定数や振動振幅などの測定条件)を理論的・実験的にに検討し、近接場光を力として高分解能に測定するための条件を求めた。 また、近接場光を力として高感度・高分解能に測定するため、近接場光学顕微鏡の様々な構成要素の低ノイズ化を実現した。具体的には、変位検出計の低ノイズ化を実現し、力検出の高感度化・高分解能化を実現した。また、不要反射が極限まで低減するように光照射系を改良し、バックグランド光を低減した光照射系を実現した。 さらに、物質表面の構造と局在する近接場光の分布を原子スケールで超高感度・超高分解能に観察できることを実証した。試料表面としては、原子レベルで清浄で平坦な表面が容易に得られる銀表面上に吸着させた2層のペンタセン分子を取り上げた。その結果、ペンタセン分子の長軸に沿った端の部分で近接場光が強くなることを実験的に見出した。この結果は、電子に占有されているペンタセン分子の軌道のうち、エネルギーの最も高い最高被占軌道(HOMO)が画像化されていることを示唆する。 原子スケールの空間分解能を有する光学顕微鏡が開発されたことにより、これまで知ることのできなかった物質と光との原子スケールの相互作用を直接測定できるようになった。得られる知見は、光学材料の機能発現機構を解明することを容易にし、物性科学において極めて重要な学問領域であるナノフォトニクスを大きく進歩させると期待される。
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