2020 Fiscal Year Research-status Report
電子状態操作による反応領域選択型マルチスケール固相反応プロセスの創出
Project/Area Number |
20K21129
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 和久 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (70314424)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 内殻電子励起 / 局在表面プラズモン共鳴 / 格子変調 / 固相反応 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、常温で化合物相を自在に形成する新しい反応領域選択型マルチスケール固相反応プロセスの創出を目的として、以下の研究を行った。 (1)内殻電子励起による界面固相反応の誘起 CuとAl2O3の電子ビーム蒸着により、アモルファスAl2O3膜中にCuナノ粒子が分散したCu/a-Al2O3膜を作製した。作製後、100keV電子を室温で30min照射したところ、化合物相(Cu9Al4)が生成した。ドースレートは5.5x10^23 e/m2s、トータルドースは9.8x10^26e/m2である。この反応は熱処理では進行しないことから、電子照射による電子励起効果に起因すると考えられる。すなわち、電子励起によりアモルファスAl2O3が分解し、生成したAlが直ちにCuと固相反応することにより、室温で化合物が形成されたものと考えられる。同様の固相反応をa-PdSi/a-SiOx系においても確認した。 (2)局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による格子変調の定量評価 上記(1)で作製したCu/a-Al2O3膜に室温でレーザー光を照射したところ、電子回折図形においてCu111反射のピーク位置が低散乱角側にシフトした。すなわち、レーザー照射により(111)面間隔が増加した。面間隔の増加は約0.9%であった。レーザーをOFFにすると、ピーク位置は元の値に回復した。レーザー光のON/OFFを繰り返すと、ピーク位置は可逆的に変化した。ピークシフトの起源として、レーザー照射による局所的な温度上昇あるいはLSPRによる格子変調が考えられる。さらに、より出力の高いパルスレーザーをPt/a-SiOx膜に照射したところPt12Si5相が生成した。しかしながら、照射によりナノ粒子組織に顕著な凝集が見られたことから、この反応には融解が関与しているものと推察している。 上記(1)、(2)の研究により、電子照射により界面固相反応が誘起されること、レーザー光照射により格子変調が誘起されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、Cu/a-Al2O3膜において電子照射により界面固相反応が誘起されること、レーザー光照射により格子変調が誘起されることを明らかにし、当初の目的を概ね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
内殻電子励起とLSPRとの協奏効果の発現を目指して、本年度に得られた結果をもとに、LSPRによる格子軟化が顕著に現れるレーザー照射条件下にて電子照射を行う。化合物形成に必要な電子線量がレーザー光照射の有無に依存するかどうか、という観点に着目して、Cu化合物相(Cu-Al、Cu-Si)の急速な形成について研究を行う。
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Causes of Carryover |
今年度、国内学会が紙上開催、WEB開催となり、出張旅費の支出が少なくなったため、次年度使用額が生じた。翌年度分と合わせて、電子顕微鏡観察・薄膜試料作製にかかる消耗品購入費用、旅費、論文投稿料として執行する予定である。
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Research Products
(2 results)