2020 Fiscal Year Research-status Report
宇宙初期天体探索に向けた表面プラズモン/熱電材料赤外検出器の開発
Project/Area Number |
20K21138
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
原田 尚之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (90609942)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 薄膜 / デバイス / 酸化物 / 表面プラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来の半導体光検出器とは異なる、新しい原理で動作する赤外検出器を開発する。着目する物理現象は、金属微細構造の局在プラズモンによる光吸収と、熱電材料による高効率の熱電変換である。局在プラズモンで、回折限界以下の微小領域に集められたエネルギーを電圧として検出することで、原理的に高集積化可能な赤外検出器の動作原理実証を行う。表面プラズモンでの光吸収により励起された電子のエネルギーを電圧として取り出すには、赤外透過性の高い下部電極の作製が重要である。今年度は種々の酸化物層状金属をパルスレーザー堆積法を用いて作製した。熱浴として優れ、大面積のウエハーを入手可能なサファイヤ基板上に層状金属電極を堆積し、X線回折・透過型電子顕微鏡により結晶構造を評価した。また、光透過率の測定により、赤外透明電極としての特性を評価した。高解像度の光検出器を作製するには大面積の薄膜を作製する必要がある。大面積薄膜の作製に適したスパッタリング法を用いて酸化物薄膜を作製するために装置の改造を行った。下部の赤外透明電極と結晶構造が合う熱電材料を探索しターゲットを作製した。今後、熱電材料を下部電極の上に積層し、界面の詳細な結晶構造を評価する予定である。赤外光照射時の電圧出力特性を最大化する素子構造について検討を行い、素子作製に必要な微細加工プロセスを検討した。特に、下部の赤外透明電極の微細化には成功しており、今後熱電材料との積層構造の微細化に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では、本年度中に熱電材料と赤外透明電極の積層構造を作製する予定であった。しかしながら、コロナ禍により実験の実施が制限されたこと、課題代表者の所属変更に伴い薄膜作製装置の立ち上げに時間を要したことの2点により、熱電材料の薄膜作製条件最適化が当初の予定よりも遅れている。今後、薄膜作製と結晶構造評価を可能な限り効率化することで、進捗の遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく立ち上げた薄膜作製装置で、赤外透明電極と熱電材料を積層する。積層した薄膜はX線回折と透過型電子顕微鏡により結晶構造を評価する。熱電材料のゼーベック係数を所属研究所内の共同利用設備を利用して評価する。積層構造を電子線リソグラフィーで微細化し、積層デバイスの上にAuやITOのナノ構造を作製する。AuやITOのナノ構造による光吸収を評価するために、種々の顕微分光法を利用する。既存のプローブステーションに光照射機能を増設し、光照射下で電流―電圧特性を評価する。これにより、電流がゼロでの開放端電圧の大きさから、光検出器の出力特性を評価する。電磁界シミュレーションと熱輸送シミュレーションを組み合わせて素子の最適な構造を計算により求める。赤外光検出のシグナルーノイズ比を大きくするために、既存のロックイン検出器に光チョッパーを増設し、赤外光のロックイン検出を試みる。スパッタ法による薄膜の大面積化に取り組み、ウエハースケールでデバイスを作製し、高解像度化を図る。うまく赤外光を検出できた場合には、所内の共同利用設備の低温プローバーを利用して、サファイヤウエハーの熱浴部分を冷却しながら、赤外光応答を評価する。冷却下では光の検出感度やシグナルーノイズ比の向上が見込まれる。冷却とロックイン検出を駆使した場合の特性を、既存の半導体検出器と比較する。構造の最適化、材料の最適化により、既存の検出器を超える特性を目指したい。
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