2020 Fiscal Year Research-status Report
Atomic-scale tribology in liquid environment
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20K21143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
一井 崇 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30447908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都宮 徹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70734979)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | トライボロジー / 原子間力顕微鏡 / 走査プローブ顕微鏡 / 固液界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
摩擦・摩耗に伴うエネルギー損失は莫大であり,その低減は社会に多大な利益をもたらす.トライボロジーとは、摩擦に関する学問体系である。摩擦の低減に潤滑油が有効であることは古くから知られており,潤滑油中でのトライボロジー研究は極めて重要である. 本課題では、われわれが新規開発したバイモーダル原子間力顕微鏡 (AFM) 技術をベースとし、潤滑油中における固液界面での摩擦現象を原子レベルで解明することを目的としている。本技術の特徴は、(1) 音叉型水晶振動子センサを用いることにより、高粘度潤滑油中においても原子スケールでの分析が可能であること、(2) バイモーダルAFM技術により、垂直・水平力の同時検出が可能であること、の2点である。 2020年度は、まず、水平力検出についての定量解析に取り組んだ。有限要素法に基づく振動解析に加え、新たに運動方程式による解析技術を確立し、これらと実験結果が全てよく一致することを見出した。これにより、水平方向に働く力の定量解析技術を確立した。また、面内に異方性を有する試料の分析により、本AFMが、探針が水平方向に振動しているだけでなく、水平方向の相互作用力を真に検出していることを実験的に示した。 さらに、これらの技術をもとに、二種類の潤滑油中における固液界面の分析を行い、垂直方向と水平方向の両方について、固液界面における液体の異方的な局所粘度分布の存在の可視化にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、バイモーダルAFMにおいて探針が水平方向に振動していることは実験的に確認されていたが、それがどの程度の振幅であるのか、そしてそれによって真に水平方向の力が検出されているのかは明らかでなかった。これら二つの課題を解決できたのは大きな成果であり、研究は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
装置開発ならびにその解析には十分な成果が得られたことから、これを用いた固液界面での実証研究にシフトしていく。具体的には実用潤滑油中における界面での液体分子密度分布の描像と同時に、界面での異方的な粘度分布を描像し、これらと原子レベルでの摩擦現象との関係性を実験的に明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、当初計画されていた実験的検証よりも理論解析を優先させた結果、実験に必要な物品購入がなくなった。理論解析で十分な結果が得られたことから、次年度は実験的な実証計画にシフトしていく計画である。
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