2021 Fiscal Year Research-status Report
negative muon spin spectroscopy for ion diffusion measurements
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20K21149
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
杉山 純 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 特任研究員 (40374087)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 負ミュオン / ミュオンスピン回転緩和 / イオン拡散 / リチウム電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種の電池内では電荷担体であるLi+・Na+等のイオンが拡散移動するので、移動のしやすさの指標である「拡散係数」を求めることは材料開発に欠かせない。特に遷移金属元素を含む正極材料に対しては、物質固有の拡散係数を測定し、横並びに比較する手法は申請者の開発した「正ミュオンスピン回転緩和(μ+SR)」法しかない。しかし、物質中に打ち込まれた正ミュオンは高温で拡散し始め流ので、正確な拡散係数を求められない。そこで拡散種の決定に負のミュオンを用いるμ-SR法を併用する。負ミュオンは物質中では重い電子として振る舞い、原子核に捕獲される。つまり、物質の分解温度付近でも原子位置という固定点から、周辺のイオンの運動を捉える。なおμ-SRの信号強度はμ+SRの約1/6なので、μ-SR測定でμ+SR並みの解析精度で結果を得るためには、36倍の統計が必要である。そこで、μ-SRで拡散種を決め、μ+SRで拡散の詳細を明らかにする「ハイブリッド測定」μ+-SRを手法として確立する。 Liイオン電池の正極材料には大別して3種類の構造がある:1)オリビン構造、2)スピネル構造、3)層状岩塩構造である。これまでのμ-SR実験により、1)に属するLiMnPO4、2)に属するLi[Ni1/2Mn3/2]O4とLi4Ti5O12においては、正ミュオン(μ+SR)で観測される拡散挙動の起源がLi+拡散であることを確認した。 また、6Liと自然Liのμ-SR実験により、低温(10K)までスペクトルに緩和が現れないことを見出した。これは(緩和の見られない)室温測定のみの結果から、擬似Heと見做せるミュオンLiがLi金属内を高速拡散しているとの従来予想を覆すものである。またμ-SRスペクトルの解析にも重要な知見である。 このようなμ+-SRの結果については海外でも評価され、招待講演を国際会議3件・国内会議2件で行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リチウム電池の正極材料については、層状岩塩構造のLiNiO2等についてもμ-SRを測定済みで、現在測定データを解析中である。Covid-19のために英国施設の利用が制限されたが、施設研究者と欧州共同研究者と一緒にリモート実験を1回実施した。問題は英国施設の長期閉鎖のために、2021年秋から2022年秋までの1年間実験ができないことである。このため再開後つまり2022年度後期での実験を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
Li電池の正極材料については一連の実験を終え、μ+SRで視る拡散種がLiであることを確認した。すなわち、Li電池正極材料については、充放電過程の拡散挙動をμ+SRで測定できることを確認した。このため、動作状態の電池内での拡散係数を求める「オペランドμ+SR」の準備を進める。 一方Li電池の電解質材料、Na電池・K電池材料については、粛々とμ-SR実験を進め、従来のμ+SRで見出された拡散挙動の原因を同定する。
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Causes of Carryover |
Covid-19とそれに伴う英国施設長期閉鎖期間の変更のため、海外出張(実験・会議)旅費がゼロだった。2022年度は海外実験(3回、スイスPSI・カナダTRIUMF・英国ISIS)・海外国際会議(イタリア開催)のための渡航が可能となると予想されるので、その旅費等に充当する。
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[Presentation] Negative muon spin rotation and relaxation for energy materials2021
Author(s)
Jun Sugiyama, K. Ohishi, I. Umegaki, S. Takeshita, K. Shimomura, W. Higemoto, T. Nakano, O. K. Forslund, E. Nocerino, K. Papadopoulos, Y. Sassa, M. Mansson, A. Hillier, K. Ishida, K. Ninomiya, K. Kubo
Organizer
The Material Research Meeting 2021 (MRM2021)
Int'l Joint Research
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