2022 Fiscal Year Research-status Report
2つの可干渉光源と高度情報科学を用いた透過電子顕微鏡ダメージレス観察法の開発
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20K21150
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
平山 司 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 執行理事 ナノ構造研究所副所長 (50399599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穴田 智史 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (40772380)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 2光源 / 可干渉 / 高度情報科学 / 像再生 / ダメージレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,量子力学の基本的原理を活用した「干渉」と近年非常に進歩している「高度情報科学」による情報解析やイメージング法によって,TEM観察における試料への電子線照射量を最小にして照射損傷を抜本的に回避しながら良質な像を得る技術を確立し,電子線照射に弱いナノ材料の解析・評価法を格段に進歩させることを目的としている. 本研究において,令和2年度には,初期計画で想定した実験条件ではフーリエ面上に現れる微小物体の情報が,予想よりはるかに小さいことがわかった.このことは,フーリエ面に形成されるパターンを情報科学的手法を用いて処理することによって像再生を目指す本研究において,重要な課題であるため,令和3年度には次の2つの項目について理論的に検討・考察した. その結果,まず,点物体を反位相の2つの完全可干渉平面波で照射した場合に発生する2つの散乱球面波の強度は,打ち消し合ってその強度は非常に小さくなることが示唆された.次に,完全可干渉性を持つ2つの平面波が試料面で干渉した場合,電子線強度がゼロになる場所では波動場そのものがゼロになることがわかった.このことは,そこに置かれた点物体からは散乱波が発生しない可能性を示唆しており,2つの平面波によって発生する2つの球面波の情報を分離結像するという本研究の手法が,簡単には成り立たないことを意味する.このため,点物体からなんらかの方法で散乱球面波を発生させる手法が望まれる. 最近,量子電子顕微鏡と呼ばれる新しく興味深い手法が提案され予備的な実験が国内外で行われていることを知り,令和4年度にはこの技術を応用して我々の問題解決に使えないかどうかを検討したが,我々の目指す手法とは異なり,電子線強度は試料のどの部分においてもゼロにはならず,我々の問題の解決方法にはならないことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」のところで記述したとおり,完全可干渉性を持つ2つの平面波が試料面で干渉した場合,電子線強度がゼロになる場所では波動場そのものがゼロになることがわかった.このことは,そこに置かれた点物体からは散乱波が発生しない可能性を示唆しており,2つの平面波によって発生する2つの球面波の情報を分離結像するという本研究の手法が,簡単には成り立たないことを意味する.また,フーリエ面での試料情報は,初期計画で考えていたよりはるかに小さく,検出困難であるというシミュレーション結果とも一致する.このため,点物体からなんらかの方法で散乱球面波を発生させる手法が必要である. 以上のように,当初計画では想定していなかった問題が発見され,それを解決する有力な方法が見つけられていないため,当初計画に比べると「やや遅れている」と判断せざるを得ない.
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Strategy for Future Research Activity |
初期計画には含まれていない課題(入射波強度がゼロの場所においた点物体から散乱球面波を発生させる何らかの技術)が明らかになったので,今後は次の方針で研究を進める. (1)「入射波強度がゼロの場所においた点物体から散乱球面波を発生させる何らかの技術」を考案する. (2)上記の条件を満たす理想的な実験ではないが,現在所有する電子顕微鏡を用いて,不完全ながらも干渉結像実験を行い,理想的な実験に向かってアプローチする.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大のために,令和3~4年度の海外出張(情報収集・成果発表)が全くできず,計画していたその費用が残っている.令和5年度に感染状況が好転して海外渡航が可能になれば,ぜひ出張したい.また,電子顕微鏡のオーバーホールまたは劣化している部品の交換・修理などにも予算を使いたい. 令和5年度の支出計画概略は,消耗品費:10万円,海外出張旅費:30万円,国内旅費:10万円,電子顕微鏡の保守・修理:10万円,講演謝金:10万円,論文の英文添削:5万円,学会参加費:5万円,補助員人件費:3万円,合計:83万円.
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