2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K21162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒崎 健 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (90304021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 佑治 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20571558)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ヒ化ホウ素 / ホウ化シリコン / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ホウ素の同位体を濃縮したヒ化ホウ素の熱伝導率を評価することで、ホウ素の同位体組成が熱伝導率に及ぼす影響を明らかにするとともに、熱伝導率のさらなる向上を図る。物質を構成する原子の質量差は、固体中で熱を伝えるフォノンの散乱要因となる。したがって、ヒ化ホウ素を構成するホウ素の同位体組成を10あるいは11に濃縮することで、ヒ化ホウ素の熱伝導率の向上が期待できる。 天然ホウ素ならびにホウ素10濃縮ホウ素を出発物質として、固相反応法あるいは溶融法により多結晶ヒ化ホウ素を作製する。熱伝導率は、熱拡散率、比熱、密度から評価する。熱拡散率はフラッシュ法で測定する。Klemens-CallawayモデルやBorn-von Karmanモデルに基づいた熱伝導率解析を実施する。実測データと解析結果を比較することで、同位体組成のみならず欠陥や粒界の影響をも定量的にあらわすとともに、無欠陥・単結晶かつ同位体濃縮を施したヒ化ホウ素の熱伝導率、すなわち、ヒ化ホウ素が取りうる最大の熱伝導率を推定する。 本年度は、同位体濃縮ヒ化ホウ素を合成するために、ホウ素10あるいはホウ素11に同位体組成を濃縮したホウ素を入手した。ヒ素が有毒であるため、毒物専門の化学会社と調整の上、同位体濃縮ヒ化ホウ素の合成の可能性を検討した。並行して、海外研究者と連携しすることで、ヒ化ホウ素の合成をすすめた。 ヒ化ホウ素の合成研究と並行して、無毒で安価な熱マネジメント材料としてホウ化シリコンに着目し、試料の合成と熱伝導率の計測に着手した。まず、天然ホウ素を用いて、シリコンとホウ素の1;6の化合物を合成した。X線回折測定の結果から、単相試料が合成できていることを確認した。試料を放電プラズマ焼結することで、熱伝導率測定用の試料を準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同位体濃縮ホウ素の入手に成功した。化学会社や海外研究者と連携を図ることで、有毒で取り扱いの困難なヒ化ホウ素合成の見込みをつけた。ヒ化ホウ素研究と並行して、ホウ化シリコンに着目し、一部の物質について合成試験を実施し、所望の試料の合成に成功した。以上により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒ化ホウ素の合成と特性評価を第一の課題ととらえているが、毒性の観点から研究推進が難しいとなった場合は、ホウ化シリコンを主要な研究対象とすることも検討する。現在は、天然ホウ素を用いて合成試験を進めているが、同位体濃縮ホウ素を用いて各種資料の合成と熱伝導率測定を実施する。
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Causes of Carryover |
海外出張等が中止となったことで旅費が予定通り使用できなかった。海外から研究者を呼べなかったので謝金が予定通り使用できなかった。実験が非常に効率的にすすんだことで、当初予定していた消耗品をかなり節約することができた。今年度は、引き続き効率的な実験を心がけるとともに、計画通りの予算の執行をすすめる。
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Research Products
(5 results)