2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K21162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒崎 健 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (90304021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 佑治 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20571558)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ヒ化ホウ素 / ホウ化シリコン / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒ化ホウ素の毒性に起因する実験の困難さから、材料の合成と特性評価に多くの負担が生じた。そのため、ヒ化ホウ素に類するホウ素化合物のうち、無毒で安価、取り扱いのしやすい物質としてホウ化シリコンを取り上げ、その合成と物性評価をすすめた。具体的には、SiB6の高密度バルク体を合成し、熱伝導率と硬度を実験的に評価した。今回合成したSiB6は、単位格子中に290個の原子を含む非常に複雑な結晶構造(斜方晶系のPnnm空間群)を有していることを確認した。XRDパターンから計算した格子定数は、a = 0.1444 nm、b = 0.1834 nm、c =0.9960nmであり、試料の相対密度は99%であった。熱伝導率は予想に反して非常に低く、室温において約10 Wm-1K-1であった。さらに興味深いことに、ビッカース硬度が25 GPaと非常に高かった。本研究を通じて、SiB6が低い熱伝導率と高い硬度を併せ持つ特殊な材料であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒ化ホウ素から派生してホウ化シリコンの合成と熱伝導率評価を進めたところ、SiB6が特異な物性を示すことを発見した。具体的には、SiB6が非常に高い硬度と低い熱伝導率を併せ持つことを見出した。通常、高い硬度を有する物質は熱伝導率も高い。なぜなら、高い強度は強固な原子間結合に起因する場合が多く、強固な原子間結合は高い熱伝導率を導くからである。ところが、SiB6の場合、その極端に複雑な結晶構造とナノスケールで材料中に高密度に形成される欠陥により、通常はトレードオフの関係にある高い強度と低い熱伝導率が同時に発現した。この特異な特徴をいかして、機械的強度が優れた断熱材料や熱電材料といった機能性材料への応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒ化ホウ素の強い毒性のため実験が非常に限られるという問題は変わらず存在する。継続してヒ化ホウ素の合成と熱伝導率評価を試みると同時に、今回新たに発見したSiB6についての物性研究を深めていきたい。例えば、熱膨張率や比熱、弾性定数といった、熱伝導率と硬度以外の物性を評価し、総合的な観点からSiB6の固体物性を明らかにしていきたい。 海外出張等が中止となったことで旅費が予定通り使用できなかった。実験が効率的にすすんだことで、消耗品を節約することができた。引き続き効率的な実験を心がけるとともに、当初計画通りの予算の執行をすすめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行を受けて、必要な研究資材等の入手が困難になり、経費の計画通りの執行と研究そのものの実施に遅れが生じた。翌年度分として請求した助成金は、消耗品、人件費、旅費等に使用することで、研究を遅れることなく遂行する。
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