2020 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ選択性をもつタンパク質分子ヒーターの開発
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20K21172
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60270469)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 分子ヒーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヘムタンパク質を用いて高効率のタンパク質ヒーターを開発することである。ヘムは鉄ポルフィリン錯体の一種であり、ヘムタンパク質はヘムを含むタンパク質の総称である。ヘムタンパク質はタンパク質ヒーターとなりうる高いポテンシャルを有している。ヘムは高効率の光-熱変換素子として働くうえ、繰返しの光励起に対して極めて安定である。また、ヘムは細胞中で生合成されるため、外部から何も加えることなく、細胞中でタンパク質ヒーターとしてヘムタンパク質を発現させることが可能である。 タンパク質をヒーターとして用いる場合、ヒーターとなるタンパク質が自ら放出する熱によって変性してしまってはヒーターとして機能しない。そこで、熱安定性の高いヘムタンパク質の中から候補を検討した。高度好熱菌由来のチトクロムb552を選び、発現用プラスミドを作製した。これを用いて大腸菌中でチトクロムb552を発現させ、精製試料を得た。このタンパク質試料について、吸収スペクトルの温度依存性を調べたところ、90℃を超えてもほとんど変性しないという高い熱安定性を示した。この高い熱安定性から考えて、長時間安定なタンパク質ヒーターとして機能すると予想される。さらに、タンパク質ヒーターの加熱能を定量的に調べるために、チトクロムb552に蛍光タンパク質(mCherry)をリンカーで繋いだ融合タンパク質を作製した。mCherryは、温度に依存してその蛍光スペクトルが敏感に変化するため、タンパク質ヒーターからの熱放出を高感度で検出することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質ヒーターとして高い可能性を持つタンパク質試料を得ることができた。また大腸菌中での発現もよく、今後の分光測定、イメージング測定も支障なく行えると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、令和2年度に製作したタンパク質分子ヒーターを用いて、細胞中の熱誘起現象が観測可能であることを実証する。タンパク質分子ヒーターによって+10℃以上の温度上昇が得られると見積もられる。この値は、細胞内の温度不均一幅よりも大きく、天然の細胞内熱産生を模倣するには十分な大きさである。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のために、所属大学の行動基準に基づいて、研究活動を制限せざるを得ない期間があった。令和3年度は実験の計画を見直して、令和2年度に実施できなかった実験を含めて、当初計画の実験を実施する。
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Research Products
(1 results)