2021 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ選択性をもつタンパク質分子ヒーターの開発
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20K21172
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60270469)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 分子ヒーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヘムタンパク質を用いて高効率のタンパク質ヒーターを開発することである。ヘムは鉄ポルフィリン錯体の一種であり、ヘムタンパク質はヘムを含むタンパク質の総称である。ヘムタンパク質はタンパク質ヒーターとなりうる高いポテンシャルを有している。ヘムは高効率の光-熱変換素子として働くうえ、繰返しの光励起に対して極めて安定である。また、ヘムは細胞中で生合成されるため、外部から何も加えることなく、細胞中でタンパク質ヒーターとしてヘムタンパク質を発現させることが可能である。 令和3年度は、令和2年度に製作したタンパク質分子ヒーターを用いて、局所加熱による溶液の温度上昇を検証した。局所温度の測定には、水のラマンスペクトルが温度に敏感に変化する性質を用いた。まず、温度制御した試料について、ラマンスペクトルを測定し、相対バンド強度と温度との検量線を作成した。次に、タンパク質ヒーターを含む試料に対して、光励起によるラマンスペクトル変化を高精度で測定し、前述の検量線から温度変化を評価した。その結果、タンパク質ヒーターによって、2-3 Kの温度上昇が起きることを実証した。また、励起光強度に対して温度上昇幅はほぼ比例し、励起光強度の調整によって加熱の程度を制御できることもわかった。さらに、複数種のヘムタンパク質について、局所加熱測定を行い、いずれも温度上昇を確認した。これは、ヘムタンパク質が一般的に、タンパク質ヒーターとして働くことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
局所温度測定に用いるレーザーが故障したため、当初の計画に遅れが生じた。なお、現在は代わりのレーザーを使用することによって、局所温度測定ができるようになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘムタンパク質だけでなく、ポリペプチド鎖のみからなるタンパク質についても、タンパク質ヒーターの可能性を検証する。
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Causes of Carryover |
実験に使用しているレーザーが故障し、計画の遂行に遅れが生じたため。
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