2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of Isolable Group-14 Element Species That Contains a Single Pi-Bonding
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20K21185
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩本 武明 東北大学, 理学研究科, 教授 (70302081)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | π電子系 / ケイ素 / 単結合 / 反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
π型のC-C単結合をもつ化合物の有力な前駆体である2,4-ジシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エンの構造異性体、1,4-ジシラブタトリエンを、空気中不安定な化合物として合成単離した。この化合物の合成は、安定ジアルキルシリレンとハロアルケンから多段階で調製された、両端にハロシリル基を持つアセチレンの還元的脱ハロゲン化により達成された。結晶中で、この化合物の不飽和ケイ素-炭素-炭素-ケイ素部分は直線構造を取っていた。またこの部分のケイ素-炭素間および炭素-炭素間の距離はどちらも一般的なケイ素-炭素二重結合および炭素-炭素二重結合距離の範囲内にあった。詳細な理論計算の結果、得られた1,4-ジシラブタトリエンは、目的化合物である2,4-ジシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エンよりもエネルギー的に安定であることが求められ、実験結果と矛盾がないことが確かめられた。 また、π型のゲルマニウム-ゲルマニウム単結合をもつと期待される、1,3-ジゲルマ-2,4-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタンの合成を、安定ジアルキルシリレンとアリールトリクロロゲルマンとの付加体の還元反応を用いて試みた。その結果、ナトリウムを用いた還元的脱クロロ化により、目的化合物の異性体である(シリル)ジゲルマシラシクロプロペンが生成することを見出した。その分子構造をX線構造解析で確かめた。理論計算の結果、得られた(シリル)ジゲルマシラシクロプロペンは目的化合物よりも安定であることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
π型のC-C単結合をもつ化合物の有力な前駆体である、高度に歪んだ炭素-炭素二重結合を持つ2,4-ジシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エンの構造異性体、1,4-ジシラブタトリエンの合成に時間を要したが、多段階合成において収率の低かった反応の条件最適化を進めることができた。またゲルマニウム化合物については、ケイ素を用いた場合と異なる生成物が得られているが、これは元素の違いを反映しているものであり、追究する必要があるものである。新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、化合物の合成に用いる薬品や消耗品の調達の遅れの影響はあるが順調に進められていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
高度に歪んだC=C二重結合を持つと期待されるビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エンを、今年度合成した化合物1,4-ジシラブタトリエンの異性化により合成し、その分子構造を明らかにする。1,4-ジシラブタトリエンの両端にあるケイ素-炭素二重結合化合物は光励起により、ジラジカル中間体を生成すると考えられているため、光反応により目的化合物が合成できるものと予測している。更に得られたビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エンの橋頭位炭素上への付加反応によるπ型C-C単結合化合物の合成を進める。特に四塩化炭素を用いた塩素化や単体ヨウ素を用いたヨウ素化等について検討を進める。合成した化合物のX線構造解析による分子構造の解明、各種スペクトルと理論計算を用いた電子状態の解明を行うとともに、種々の試薬との反応を検討し、π型C-C単結合の性質解明を追究する。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」のところにも記載したように、π型炭素-炭素単結合を含む化合物の合成にあたり多段階を要し、また、ゲルマニウム化合物がケイ素化合物と異なる挙動を示した。本研究で焦点を当てているπ型単結合化合物の本質を理解する上で、この挙動の分析は必要であり、時間を要した。以上のように、研究目的を達成させるため、次年度使用額が 生じた。また、コロナウイルス感染拡大による、薬品や備品調達の遅れも次年度使用額が生じた理由である。次年度、物品費は主に化合物の合成およびスペクトル測定のための有機無機試薬および高純度の有機溶媒、旅費は学会参加のための旅費、その他は、化合物の同定のためのスペクトル測定の依頼費や英語論文校閲費等に主に用いる予定である。
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Research Products
(7 results)