2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21191
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北村 雅人 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 名誉教授 (50169885)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 不斉増幅現象 / 銅錯体 / Friedel-Crafts反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究者はこれまでに、光学活性な窒素系二座配位子「Naph-diPIM-dioxo-iPr」の銅錯体を触媒に用いると、インドール類とトリフルオロピルビン酸エステルとの不斉Friedel-Crafts反応が極めて高い反応性、エナンチオ選択性で進行することを見出してきた。反応機構解明の過程において、触媒の絶対濃度が高い場合(条件A)および配位子(L)/銅比が高い場合(条件B)において配位子(L)のエナンチオマー比(er; (R)-L:(S)-L)から予想される生成物のそれよりも高い値が観測される、正の非線形現象(NLE)を観測した。その際に、それぞれ様相の異なる固体が析出する。その現象に興味を持ち、理解を深めるるべく機構解明研究を実施した。それぞれの条件において反応条件・操作に対する反応速度・生成物のer・固体の析出量・溶液中の銅濃度の相関を詳細に系統的に調査するとともに、X線結晶構造解析・重水素化配位子を用いた固体の質量分析により固体構造を推定した。その結果、条件Aにおいては、L/銅の1:1錯体が、異なるエナンチオマーとのヘテロキラル二量体を形成し、これが固体化するために不斉増幅が起こる。これは、相分離型のNoyori機構として理解できる。条件Bにおいては、L/銅の2:1錯体を形成し、これが多量化して相分離する。この時に、一つの銅金属に同じ立体をもつLが配位した錯体、((R)-L)2Cuないし((S)-L)2Cuを形成する。Kagan機構として知られるヘテロキラル錯体((R)-L)((S)-L)Cuの形成は起こらない。生じた((R)-L)2Cuおよび((S)-L)2Cuがヘテロキラル二量体として相互作用する。新しいNLE発現機構であり、構造決定することなく理解されがちな相分離型NLEの理解に一石を投じるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画した、Cu:LS:LR = 1:1:xの配位子過剰系で発生する不斉増幅現象の最適化をほぼ達成した。これに加えて、次年度移行に実施予定であった固体の構造決定も実施した。さらに、Cu:LS:LR = 1:x:(1-x)系において、高濃度条件において異なる機構で非線形現象が発現することも見出した。当初の計画よりも順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き機構解明研究を進めるとともに、これまでに開発したNaph-diPIM-dioxo-iPr配位子を利用する種々の触媒的不斉合成法における非線形現象を検証する。さらに、新しいLewis酸触媒型反応探索を進める計画である。
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Research Products
(4 results)