2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21198
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | トリプチセン / イノラート / 鈴木カップリング / パラジウム触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでイプチセンの中で基本となるトリプチセンの1段階合成法を見出している。この合成法の特徴はトリプチセンの片面に選択的に官能基を導入することができる唯一の方法である点である。このトリプチセンを「カゴの格子」に相当する3本のリンカー(炭素鎖、環など)を用いて共有結合で連結することで安定かつ半剛直なカゴ状分子を合成することを目的とした。先に合成したトリシリルトリプチセンを臭素化剤で処理すると高収率でトリブロモトリプチセンを合成することができた。昨年度は、9-ヒドロキシ-1,8,13-トリプチセンに対して鈴木カップリングを付して、フェニル基リンカーを構築したが、本年度は9-メトキシ―1,8,13-トリブロモトリプチセンに対して同様の反応を付したところ、13位が還元され、1位が歪み架橋され8位のみが鈴木カップリングしたキラルトリプチセンが高収率で得られた。本反応の機構を詳細に解析したところ、パラジウムに酸化的付加したのち1,5-パラジウムシフトが生じて13位が還元され、次いで酸化的付加で架橋が形成され、最後に鈴木カップリングが進行したことが明らかとなった。また、パラジウムはフェニルホウ酸のホモカップリングによって0価に還元され、触媒回転していることが分かった。本新規連続反応はパラジウムが4役をこなしている。理論計算によりその反応機構は支持された。キラルトリプチセンはキラルカラムにより光学分割することができた。以上の成果はパラジウム触媒の近接効果による新たな連続反応であるだけでなくトリプチセンの非対称カゴ構築に有用な知見である。 また、トリプチセンが酸処理で逆フリーデルクラフツ型反応が進行し、アントロンが容易に得られる新反応を見出した。本反応を利用してテトラセンの合成にも成功した。本知見はトリプチセンの骨格変換として有用であるとともに有機電子材料の供給にも有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
かご分子の合成過程において、新規連続反応を見出すことができた。カゴ分子の合成研究自体は生成物の精製に難儀していることもあり一進一退ではあるが、そのツールとなる反応開発は予想以上の成果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
多様なリンカーを用いたカゴ分子の合成を現在進めており、残り一年で一般性の検証を進める。また、トリプチセンの水平展開、すなわちイプチセンの合成研究も進めており、内部空間が拡大されたカゴ分子の創製を進める予定である。
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Causes of Carryover |
Covid19による研究の障害は少なからず生じた。特に、学会や研究打合せの中止もしくは延期、さらには研究補助員の雇用などに多大な障害が生じた。最終年度は対面による学会開催が部分的に可能になりそうであること、さらに研究補助員を雇用できそうなことから、順調に研究費を使用するとともに研究も加速すると思われる。
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Research Products
(26 results)