2021 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of Metal-Nanoclusters of Iron Group Metals
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20K21207
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木 靖弘 京都大学, 化学研究所, 教授 (10324394)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 鉄 / ホスフィン / ホウ素 / アミド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発した金属集積化反応のうち、特に鉄(II)アミド錯体を出発とする反応において、芳香族置換基を持つホスフィン類(PAr3)の利用を検討した。その結果、P-C(Ar)結合の切断が容易に起こり、二重架橋から四重架橋までの多彩な架橋リン配位子を含む鉄クラスター錯体が生成することを、単結晶X線構造解析に基づいて確認した。P-C結合の切断は、アルキル基を置換基とするホスフィン類を用いた場合には見られない現象であることから、複数の鉄原子を含む高反応性錯体にPAr3が配位した場合は、鉄に配位したPAr3のAr基が隣接する鉄原子とパイ電子を用いて相互作用し、P-C結合の切断を促進することと、その結果生じる鉄-Ar部位が鉄ヒドリド部位と結合して還元的に脱離し、芳香環を遊離することが示唆される。 他大学の研究チームと連携し、本研究に寄与する以下の課題も推進した。まず、本研究ならびに先行研究で蓄積してきた金属-ヒドリド集積型錯体の合成と反応に関する知見を生かして、亀尾肇准教授(大阪府大)との共同研究を推進し、ルテニウムを集積した四面体型ヒドリドクラスター錯体とO2の反応性について明らかにした。この結果を共著論文としてまとめ、Inorg. Chem.誌に発表した。また、本研究に用いる新しいリン系保護配位子、特にリン原子周りで三次元的な広がりを持つ配位子を開発すべく、小笠原正道教授(徳島大)との共同研究に着手し、リン含有五員環とシクロペンタジエニル基で鉄を挟んだサンドイッチ型錯体(ホスファフェロセン)に関する研究を進めた。この成果は共著論文としてまとめ、ChemistrySelect誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発した独自の金属集積化反応では、補助配位子として用いるリン配位子に芳香環が含まれる場合に、P-C(Ar)結合切断反応が起こることを、新たに発見した。これらの知見は、今後反応条件の設定や生成する化合物の設計に向けた基礎的な知見として重要である。比較的強固な鉄-リン結合で骨格保持された多金属錯体は、金属-金属結合や金属-水素結合から構成される錯体よりも分解しにくいと考えられるため、触媒前駆体として利用する場合に有用と期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに見出したP-C(Ar)結合切断反応の適用範囲がどの程度で、どのように多様な架橋リン構造を金属集積体の構成に生かせるか、より系統立てて明らかにしてパターン分類することで、現段階の発見レベルを超えて、生成物構造の大まかな設計を可能にする基盤を整える。その情報収集のために幾つかの試行実験を実施し、現時点で発見している生成物構造と収率、反応条件の関係を精査する。また、P-C(Ar)結合切断反応の対象を鉄だけでなくコバルトにも拡張し、リンを架橋部位とする金属集積についてより広く情報を蓄積する。 共同研究として開発してきたフェロセン系のリン配位子は、従来の三置換リン配位子とは立体・電子的性質が異なり、従って新しい金属集積化錯体の合成に有用と考えられる。引き続き共同研究も推進し、新規リン系配位子を用いる金属集積化反応を検討する。フェロセン系のリン配位子を用いる場合にもP-C結合切断が起こる場合には、上記と同様の対応を施す。
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Causes of Carryover |
事務からの実経費連絡待ちにつき、現時点の経費入力額が正しくない。追って修正される見込みである。
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