2020 Fiscal Year Research-status Report
Structure Analysis of Organic Materials Containing Sulfur Element in Wet State Revealed by SAXS utilizing Tender X-rays
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20K21220
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 勝宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30314082)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | テンダーX線 / 小角散乱 / 異常分散 / 高分子膜 / 硫黄 / ウエット環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目的は、これでま、散乱実験にほぼ利用されてこなかったX線エネルギー領域であるテンダーX線領域利用による構造解析手法の拡張としてウェット環境での散乱実験の整備とし、施設の高度化と合わせて世界に優位性を示して行くことである。本年度は、散乱実験とその構造解析のための試料合成とウエットな環境でのテンダーX線による散乱測定のための特殊試料セルの開発に重点を置いた。試料に関しては硫黄を含み、且つ吸水性のあるブロック共重合体とし、定量的に必要な試料を合成する方法を確立した。テンダーX線の散乱実験においては、空気や試料を挟み込む窓剤よるX線の吸収があるため、試料回りの環境は真空である必要がある。そのため水を含む系での実験は通常困難である、そのため、散乱実験を可能とする特殊試料セルの設計と作成を進めた。窓剤は窒化珪素を用い、膜厚は100-270nm 直径1㎜を用いることとした。これは実際の実験環境の真空度(数10Pa)に耐えうる条件であること、テンダーX線の透過率が2枚で60%以上を確保できる条件として、決定している。完成した試料セルを用いて、内部に水を充填した状態で24時間 上記の圧力環境下に置いたが、内部の水の漏れ、窓の破損が行らいことを確認し、試料セルの完成に至った。散乱実験は2020年度の末までに一度行う予定であったが、施設側の都合(不具合)により実験がキャンセルとなってしまったた遂行できていない。ただし、散乱実験は当初よりぎりぎりの予定であったため、計画自体は順調である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テンダーX線を利用する散乱実験において、測定対象試料は硫黄元素を含むブロック共重合体とした。まず、その定量的な試料合成法の確立を遂行した。含水状態での構造解析に重点を置くため、試料は水を含むことのできる高分子材料とした。それに平行して、含水状態で散乱実験を行うための特殊試料セルの開発を行った。テンダーX線散乱実験は、試料を真空中に置く必要がある。試料以外からの散乱を極力低減させる必要があり、試料セルは、真空状態でも窓剤が割れない設計が必要であると同時に、窓剤によるX線の散乱・吸収のない材料を選定する必要があり、その設計を行い、試料セルを完成させた。窓剤は窒化珪素の厚み100-270nm、ウインドウ直径1㎜とすることで、試料セルに水を充填した状態で、24時間真空中(数10Pa程度)でも水が漏れ出すことなく、また窓が割れることなく耐えうることを確認した。散乱実験装置そのものは、既に整備が済んでおり、2020年3月に最初の実験を行う予定であったが、施設側のトラブルで実験機会を失った。ただし、当初予定としてはセルの開発が最低限の目的であったため、進捗状況としてはおおむね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
散乱実験を行うための、試料作成、試料セルの作成も2020年度に終えているため、本年度は実際に施設に、それらを持ち込み実際の実験を行う。その上で問題点などを洗い出し、年度内に修正(試料セル)をおこなう。適切な散乱実験(十分な統計精度を得るための実験条件の洗い出しをおこないながら、手法の確立を達成させる。 その他、様々な試料(硫黄含有試料)においてもテンダーX線散乱による硫黄元素の空間分布解析について評価していく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大に伴い、実験出張による旅費の支出が大幅に減少したため。
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