2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a nocel preparation method for topological gel using molecular net and penetrating polymerization
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20K21228
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大矢 裕一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (10213886)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジカルゲル / 縫込み重合 / 分子ネット / 力学特性 / ポリエチレングリコール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,適度な網目径と網目数を持ち溶媒に可溶な三次元網目構造体=分子ネット(MN)を作成し,このMN溶液中で別のモノマーを重合(縫込み重合)することにより,トポロジカルな構造をもつ新規ゲルの合成方法を開発し,得られたゲルの特異な物性を明らかにすることを目的としている。令和2年度は,MNおよびそれを用いたゲルの作成方法を確立し,その物性を評価した。 4分岐構造を持つ末端反応性PEG誘導体4-arm PEG-OSuと4-arm PEG-NH2(いずれも分子量1万)を稀薄条件下で量論比1:1となるよう反応させ,未反応のOSu基を3-アミノ-1-プロパノールで処理した。その結果,0.4wt%で48時間反応させた場合に,再現性良く分子量が100万を超えるMNが得られることが分かった。 モノマーとしてヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA),アクリル酸(AAc)を選択し, 水中 MN共存下でラジカル重合を行った。その結果,一定以上のMNおよびモノマー濃度においてゲルが得られた。HEMAを使用した場合, MN非存在下で重合した場合にはゲルが得られなかったことから, MNによる物理的拘束を架橋点とするトポロジカルなゲルが得られたことが示された。AAcの場合は, MN非存在下でもゲル状生成物が得られたが,これは水に容易に溶解したのに対し, MNを使用して得られたゲル状生成物は形状を維持しながら膨潤した。これらのことから, MNが物理的架橋点となったトポロジカルゲルが作成できたと考えられる。膨潤試験では, 同濃度の化学架橋ゲルに比べ著しく大きな膨潤率を示し, 引張試験では同程度の初期弾性率を有する化学架橋ゲルの15倍の破断歪を示すという特徴的な物性を示した。これは, MNに物理的に拘束されている高分子鎖の滑りが大きな要因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに,MNの合成方法および,それを用いたゲルの調製方法を確立した。ゲルを物性測定用にダンベル型などに成形する方法も確立し,力学的特性や膨潤挙動などの物性測定までを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,使用するモノマーを,アクリルアミド(AAm),N-イソプロピルアクリルアミド(NIPPAm),ジメチルアクリルアミド(DMAAm),ビニルピロリドン(VP)など,他の水溶性モノマーに変えてMNゲルの合成を行い,ゲルが得られる条件や得られたゲルの物性の違いなどを調査する。特にNIPPAmを使用した場合には,その温度応答性を調べ,通常の架橋剤を使用したゲルとの違いについて検討を加える。 また,MN作成時に使用する4-armPEG-OSuおよび4-armPEG-NH2として分子量の異なるものを使用する,あるいは,2-armPEG誘導体を使用するなどして網目径の異なる種々のMNを合成し,MNの網目径と得られるゲルの物性との関係を明らかにする。 さらに,側鎖に高分子末端に重合性基が結合したPEGアクリレートのようなマクロモノマーを重合時のコモノマーとして使用して,高分子鎖がMNの網目から抜けにくくしたゲルが作成可能かどうかについても検討し,その物性の違いを議論する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大により,研究時間が短くなったこと,予定していた試薬の納入時期が遅れたことによる。使用計画は以下の通りである。 試薬購入:4-arm PEG誘導体,第2モノマーとして使用するN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)やビニルピロリドンなどのモノマー,PEGアクリレートなどのマクロモノマー,ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)から構成される分子ネットを合成する時に使用する原子移動リビングラジカル重合(ATRP)用試薬,などの購入に充当する。 謝金:研究補助を行う大学院生への謝金として使用する。
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