2020 Fiscal Year Research-status Report
疾患変異により異所的に獲得される新規RNA修飾の生合成および機能の解明
Project/Area Number |
20K21243
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 健夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (90533125)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
Keywords | tRNA / ミトコンドリア / 点変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、疾患関連点変異を持つヒトのミトコンドリアtRNAで発見した新規修飾の生合成機構および分子機能の解明することで、疾患における新規修飾の影響についての理解を深め、診断・創薬・治療戦略といった応用面での寄与にもつながるような貢献を目指している。新規修飾に予測された構造からその生合成反応を担う修飾遺伝子を予測し、疾患点変異を保持する患者由来サイブリドに修飾遺伝子を発現ベクターを用いて一過的に過剰発現させることで新規修飾の検出シグナルが増強するかを検討したところ、実際に新規修飾の検出強度の増大が確認された。またT7転写反応で作成した点変異を持つtRNAに、予測した修飾遺伝子をクローニングして得たリコンビナント修飾酵素を作用させたところ、効率は高くなかったが新規修飾の形成が確認された。これらの結果により細胞内および試験管内酵素反応において新規修飾の生合成に予測した修飾遺伝子の関与が示されたと言える。また試験管内反応による新規修飾形成は点変異による塩基置換によって変異部位に始めて導入される別の修飾の存在に依存する傾向が見られたことから、患者細胞でのみ新規修飾が見出されるという生合成メカニズムを示唆する結果となった。さらに新規修飾の分子機能を解明するためのリボソーム結合実験について実施を進めたところ、反応条件の至適化を含めた事前の入念な準備が必要となったため、引き続き検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とする新規修飾の細胞内・試験管内での再構成を示唆する結果と、生合成経路を示唆する結果が得られている。新規修飾の分子機能を解析するためのリボソーム結合実験についてトライしたところ、反応条件の至適化が不足しているためか、取得された結果の確度をあげる条件検討が必要であることが判明した。諸条件のさらなる検討を進める必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
対象となる修飾の分子機能を解析するためのリボソーム結合実験を進める。多種類のマテリアルの十分な量の確保、比較するASLへの標識反応を始めとした複数の操作ステップに加え、多種類の因子を共存させる実験系のため、適切な実験条件の設定を行う。既往の類例の情報を元に、適切なコントロールサンプルの併用のもと、予備的実験で反応条件を堅実に検討することが、最終的に精度の高いデータを得るために非常に重要な要素となるため、事前の検討を慎重かつ速やかに進める。実施予定の生化学的解析や、リボソームプロファイリング法に供するための細胞や核酸の準備や実施を引き続き進める。
|
Causes of Carryover |
本申請内容の実験実施に既存の環境(設備・消耗品)を十分に活用できたことに加え、次世代シーケンスのためのサンプル調製法の検討のための調整もあり、受諾解析のタイミングが次年度にずれたことが一因である。一方これらの要因の影響で、研究の遂行に必須な分光光度計が不調をきたした場合の迅速な更新を行うことが可能であった。翌年度も当該年度の成果を元に予定の解析を行う計画である。
|