2021 Fiscal Year Research-status Report
Screening for small molecule compounds that inhibit the biosynthesis of a specific cell-surface protein
Project/Area Number |
20K21262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
門倉 広 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70224558)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | IL6R / PD-1 / 生合成阻害剤 / ジスルフィド結合 / シグナル配列 / 小胞体 / 哺乳動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、疾病の原因となる2種類のヒト細胞表層タンパク質のシグナル配列に結合しその生合成を阻害する薬剤を探索する目的で、次の実験を行った。 1) IL6Rはヒト自己免疫疾患の原因となる細胞表層タンパク質である。IL6Rのシグナル配列を標的とする阻害剤を見つけるために、1次探索でヒットした化合物について、2次探索を行った。目的の化合物存在下、IL6Rを付与したFLuc*の一部はサイトゾルに蓄積すると予想されるが、ヒット化合物存在下、そのような分子は検出できなかった。更に、シグナル配列を他の分泌タンパク質のものに変えた場合でも、化合物の存在下FLuc*活性が上昇した。従って、ヒット化合物はIL6Rのシグナル配列に特異的ではないことが判明した。 2) PD-1は、がん細胞に対する免疫寛容の原因になる細胞表層タンパク質である。レポーターを利用して、PD-1のシグナル配列を阻害する化合物を探索するためには、PD-1のシグナル配列によってFLuc*が効率よく小胞体へと輸送され失活する必要がある。しかし、PD-1のシグナル配列によるFLuc*の輸送活性は極めて低いことが分かった。そこで、レポーターに挿入するPD-1の配列の長さを伸ばす等の工夫をしたところ、輸送活性は改善し、PD-1のシグナル配列を付与したFLuc*の約90%は小胞体内へと局在化した。しかし、大規模な探索には更なる改善が必要である。 3) 上記レポーターは申請者らが独自に開発したものである。効率良く実験を進めるためには、レポーターの特質を深く理解する必要があるため、その機能評価を行った結果、本レポーターは小胞体内におけるジスルフィド結合形成能力の低下を、極めて鋭敏に検出することがわかった。よって、1次探索では、そのような作用をもつ化合物もヒットすることが予想され、探索の際にはその点に留意する必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IL6Rのシグナル配列を標的にした化合物の探索では、1回目の1次探索で得た候補化合物について2次探索を行った。結果的には、いずれの化合物も目的の物質ではないことが判明した。しかし、その過程で、2次探索の系を確立し、探索実験のノウハウを得ることに成功した。これは今後の探索研究に向けて大きな進展である。 一方、PD-1のシグナル配列を標的にした薬剤の探索では、PD-1のシグナル配列によるFLuc*の小胞体内への局在化効率を改善することに成功したが、効率は十分ではなく、阻害剤の探索には、さらなる工夫が必要であることが判明した。 また、探索に利用しているレポーターの特質を深く理解するため、その機能評価を行った。その結果、本レポーターは小胞体におけるレドックス環境の変化を極めて鋭敏に検出することがわかった。今後の探索を行う上で基礎になる重要な情報であり、探索の効率化に役立てていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度はこれまでの結果を踏まえて次の方針で実験をすすめる。 1. IL6Rのシグナル配列を標的にした阻害剤の探索 理化学研究所の標準化合物ライブラリーを探索して得た候補化合物は、2次探索の結果、いずれも目的の化合物ではないことが判明した。よって、本年度は理化学研究所が所有するパイロットライブラリーへと探索の対象を広げる。1次探索の結果、ヒット化合物が得られたら、2次探索以降の実験をすすめる。有望な化合物を見つけたら、標的タンパク質(IL6R)の生合成に対する、化合物の作用をウエスタン解析やパルスチェイス実験で調べる。既に、1次探索と2次探索の系を立ち上げていることから、これまでよりもスムーズに実験が進むと期待している。もし、目的の化合物が得られなかった場合には、他の化合物ライブラリーへと探索の対象を広げる予定である。 2. PD-1のシグナル配列を標的とした阻害剤の探索 目的の化合物を探索するためには、PD-1のシグナル配列によってFLuc*が効率よく小胞体へと輸送され失活する必要がある。タンパク質の局在化効率は細胞によって異なる可能性があるので、様々な細胞をためす。局在化効率を改善できたら、1次探索から開始する予定である。
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Causes of Carryover |
IL6Rのシグナル配列を標的にした化合物での探索では、2次探索の途中で解析が中断した。また、先述した理由からPD-1のシグナル配列を標的とした阻害剤の探索は、開始できなかった。このため、1,591,617円の残額が生じた。令和4年度に、目的の阻害剤を探索するために必要な消耗品等として、使用する予定である。
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Research Products
(2 results)