2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of methodology for subtractive design of microbiota
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20K21275
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本田 孝祐 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 教授 (90403162)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | microbiota / cell penetration peptide / peptide nucleic acid |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにミニチュアCasヌクレアーゼであるCas12f1の特性解析を終了しており、2021年度はまずcell penetration peptide (CPP)を用いたCas12f1の細菌細胞内への導入実験に取り組んだ。これは、微生物菌叢中の標的細菌のゲノムにコードされた遺伝子に対し、これと相補的な配列を有するsgRNAを融合させたCas12f1をCPPによって導入することで標的細菌のゲノムを切断し、選択的な細胞死を誘導されることを狙ったものである。しかし、本実験により観察された細胞死の効率と選択性は十分とは言い難いものであった。これはミニチュアCasヌクレアーゼであるCas12f1をもってしてもなお、細菌の細胞外膜構造を透過するには分子サイズが大きすぎるためと推察された。そこで研究戦略を見直し、酵素タンパク質よりも大幅にサイズの小さな分子であるペプチド核酸(PNA)を用いた標的細菌の細胞死誘導に取り組んだ。PNAとはDNAの主鎖構造をN-(2-aminoethyl)glycineポリマーで置換した核酸類似体である。標的遺伝子と相補的な配列を持ったPNAを細胞内に導入することで、PNAが当該遺伝子のmRNAに結合、翻訳阻害を誘導する。大腸菌を標的とした細胞死誘導実験にて、同菌の生育に必須な遺伝子であるacpPの翻訳開始領域周辺に結合するPNAをデザインし、これをCCPと融合させたもの(CPP::PNA_ acpP)を培養液に添加した。この結果、2μMのCPP::PNA_ acpP添加時に培養液中の生菌数が半減し、8μMで完全に増殖が阻害された。CPP::PNA_ acpPは、Pseudomonas属細菌、Lactobacillus属細菌など他の細菌に対しては目立った増殖阻害効果を示さず、開発目的である細菌選択性を伴った細胞死誘導効果を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画にあったミニチュアCasヌクレアーゼによる細胞死誘導を確認することはできなかったものの、CCPと融合したPNA(CPP::PNA)を用いた標的遺伝子の不活化へと研究戦略を変更することで、研究目的である細菌選択性を伴った細胞死誘導効果を実現することができた。一連の成果は、関連学会において受賞対象になるなど高い評価を受けることができている。また前年度までに実施したミニチュアCasヌクレアーゼの特性解析に関する成果は、新規ゲノム編集ツールとして原著論文の形で報告することができている。以上のことから、 当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のとおり、大腸菌をモデルとした概念実証試験にて、CPPを用いたPNAの細胞内への導入とPNAによる生育必須遺伝子の翻訳阻害を通じた細菌種選択的な細胞死誘導が確認された。2022年度は本技術が大腸菌以外の細菌に対しても適応可能なものであるか否かを確認すべく、グラム陰性・陽性細菌のモデルとして、それぞれPseudomonas属、Lactobacillus属細菌に対し、これらに選択的な細胞死誘導剤となるCPP::PNAを作成する。なお2021年度内に実施した予備試験により、これらの細菌と大腸菌は合成培地(M9培地上)で比較的安定な共存関係を形成し、人工菌叢のモデルとして利用可能なことを見出している。2021年度に作成したCPP::PNA_acpPのほか、Pseudomonas属、Lactobacillus属細菌向けに新たに作成するCPP::PNAを用いて、人工菌叢を構成する細菌群衆のうち、任意の標的細菌のみを選択的に死滅させることを試みる。
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Causes of Carryover |
研究戦略の見直しに伴い、予算執行計画にも変更が生じて未使用額が発生した。見直し後の研究は順調に進捗しているが、ここでの鍵ツールとなるペプチド核酸の合成委託費が高額であるため、本未使用額はこの経費に充て、研究を遂行する予定である。
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