2020 Fiscal Year Research-status Report
独自の順遺伝学アプローチによる植物の活性酸素誘導性プログラム細胞死の分子機構解明
Project/Area Number |
20K21276
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
丸田 隆典 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (50607439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 貴央 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (80603802)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 活性酸素種 / 酸化ストレス / 細胞死 / カタラーゼ / シグナル伝達 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
活性酸素種(ROS)はプログラム細胞死のトリガーとして機能するが、植物ではROSのセンサーやその下流で細胞死の実行に関与する因子は未同定である。本研究では、カタラーゼ欠損株(cat2)で生じるROS誘導性細胞死のサプレッサー変異の同定と機能解析を通して、ROS誘導性細胞死の分子制御機構の解明を目指す。特に、機能未知のシステインリッチタンパク質(CRUP)に注目し、そのROSセンサーとしての可能性を含めて詳しく検証するとともに、他のサプレッサー変異の影響についても調べる。 初年度はCRUPに加え、二つの原因遺伝子(SUP1およびSUP2)の解析を実施した。これらの遺伝子の欠損により、cat2の細胞死が顕著に抑制されることを確認した。CRUPの機能解析を目的として、cDNAクローニングを試みたが、その特徴的な遺伝子構造のために上手くいかなかった。代替案として、CRUPのペプチド抗体を2種類作成し、相互作用タンパク質の同定や細胞内局在性解析に用いることにした。また、SUP1の欠損はcat2で生じるROS生成を抑制することがわかった。一方、SUP2の欠損は、ROSの下流で生じる酸化型グルタチオン(GSSG)の蓄積が抑制されることが明らかになり、GSSGの細胞死トリガーとしての作用が明確化された。cat2 sup2二重欠損株を用いたトランスクリプトーム解析の結果、同株ではDNA損傷応答が著しく活性化されることが明らかになり、細胞死回復との関連が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRUPのcDNAクローニングが困難であるため、当初予定していた細胞内局在性や相互作用タンパク質の解析のための形質転換体(タグ付き過剰発現株)が遅れているが、代替案としてペプチド抗体を作成することができた。また、SUP1およびSUP2の機能解析が当初の予定よりも進んでおり、ROSの生成からGSSGの蓄積までの過程を明確化できている。これらの理由から、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きCRUPのcDNAクローニングを継続するとともに、ペプチド抗体を利用した細胞内局在解析と相互作用タンパク質の同定を開始する。SUP1の機能解析に関しては、メタボロミクスおよびRNA-seq解析を予定しており、その欠損によりROS生成を抑制するメカニズムを明らかにする。SUP2の解析からDNA損傷応答と細胞死回復の関連が示されたため、DNA損傷応答のマスターレギュレーター(SOG1)とcat2およびsup2の多重欠損株の作出を進めている。細胞死回復現象にDNA損傷応答が関与するかどうかを明確化し、ROSからDNA損傷応答までのシグナル伝達経路の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス拡大の影響を受けて、助成開始直後からしばらくの間、十分に研究活動を実施することができなかった。そのため、2020年度に実施予定だったRNA-seq解析などを次年度に実施予定となり、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(6 results)