2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K21278
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
久米 一規 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (80452613)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 核サイズ / 分裂酵母 / 核-細胞質間の物質輸送 / 脂質代謝 / 膜輸送 / 分子遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、膜型オルガネラである核のサイズ制御の生理学的意義の解明を念頭に、研究代表者の分裂酵母を用いたこれまでの解析から明らかになった、核と細胞の体積比(以下、N/C ratio)に影響を及ぼす細胞内プロセスに着目して、N/C ratioを人為的に変化させる方法の確立を目的とする。 2021年度は、N/C ratioに影響を及ぼす少なくとも3つの細胞内プロセスについて、各プロセス(核-細胞質間の物質輸送、脂質代謝、核と小胞体間の膜輸送)の活性を調節して組み合わせることにより、N/C ratioを安定的に変化させる技術の開発に継続して取り組んだ。各プロセスの主要遺伝子についての変異株もしくは過剰発現株を組み合わせることにより、正常細胞が示すN/C ratio = 0.08を基準として、N/C ratioを安定して増大もしくは減少させる組み合わせを見出した。また、解析の過程で、細胞増殖に悪影響を及ぼすN/C ratioの値を絞り込むことができた。今後は、N/C ratioの逸脱による増殖悪化の原因についての解析を進めることにより、核サイズ制御と細胞増殖との関連性にせまる。上記解析と並行して、核サイズ制御の生理学的意義にせまるためのアプローチとして、N/C ratioの変化により影響を受ける細胞内構造(核以外の主要な膜型オルガネラや非膜型オルガネラなど)に注目した解析を行なった。2021年度は、核と細胞内構造を同時に可視化するための方法の開発を進め、核と様々なオルガネラを可視化する方法を確立した。今後、この方法を用いて、核と核以外の細胞内構造の変化を同時に捉えることにより、核サイズ制御と関連性のある細胞内構造をとらえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、分裂酵母を用いた分子遺伝学的アプローチから、N/C ratioに安定的な変化を加えるための基盤技術の開発に継続して取り組んだ。N/C ratioに影響をおよぼす3つの細胞内プロセスに着目した解析から、それぞれのプロセスの活性を変化させる条件を適切に組み合わせることで、N/C ratioを大きな値から小さな値まで変化させることに成功した。さらに、この解析の過程で、大小それぞれにN/C ratioが逸脱した細胞について調べたところ、細胞増殖に影響を及ぼすN/C ratioの値を絞り込むことができた。正常な細胞が示すN/C ratio = 0.08の値から、約50%をこえて増加する、もしくは、約15%をこえて減少すると細胞増殖の悪化がみられることがわかった。今後この関係性についての詳細な解析を行うことにより、核サイズ制御の生理学的意義を理解するヒントが得られることが期待できる。 N/C ratioの改変技術の開発に加えて、N/C ratioを改変させた細胞を用いた表現型解析を行なった。2021年度は、N/C ratioの変化による核以外の主要な膜型オルガネラや非膜型オルガネラなどの細胞内構造に与える影響を調べるためのオルガネラ可視化の方法を確立した。今後はこの方法を用いて、N/C ratioの変化に伴う各オルガネラ等の構造変化を捉える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のこれまでの解析により確立した技術を用いて作成したN/C ratioを改変させた分裂酵母細胞を用いて、細胞増殖に関する表現型解析を中心に進める。そして、核サイズ制御の生理学的意義の理解を目指す。細胞増殖に影響を及ぼす異常なN/C ratioに変化させた細胞について、タイムラプス観察を駆使して、核サイズの変化がもたらす増殖悪化の原因にせまる。並行して、N/C ratioの変化が核以外の膜型もしくは非膜型オルガネラなどの細胞内構造に与える影響についての調査も進める。必要であればタイムラプス観察を取り入れた調査を進める。またN/C ratioを改変した細胞を用いてトランスクリプトーム解析を行い、核サイズの変化が核内の機能(遺伝子発現)に及ぼす影響についての調査も進める予定である。
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Causes of Carryover |
理由は、2021年度に参加した複数の学会がオンライン開催となったために未使用となった旅費と2021年に投稿予定としていた論文の投稿費用である。論文については追加実験を現在完了させ、論文を執筆中である。翌年度に現地開催予定の学会参加のための旅費及び現在執筆中である論文の投稿費用として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)