2020 Fiscal Year Research-status Report
New drug modalities with hydrophilic mid-size peptides from microorganisms
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20K21284
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
濱野 吉十 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (50372834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 千登勢 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (20452120)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 中分子創薬 / ペプチド / 細胞膜透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物は多種多様な中分子ペプチドを生産するが、分子量1,000を超える中分子ペプチドの多くは細胞膜を透過しないため、従来の生理活性を指標とした創薬シード探索では十分に探索しきれていない。特に、極性中分子ペプチドは細胞膜を全く透過しないため、未開拓な創薬資源と言える。そこで本研究では、2カ年計画にて下記の研究項目を実施することで、極性中分子ペプチドを網羅的にポリカチオン修飾し細胞膜透過性を付与する基盤技術の構築を行う。
研究項目A(微生物由来極性中分子ペプチドの選択分離濃縮法の確立):R2年度は、既存中分子ペプチド化合物をモデルとして、イオン交換樹脂とゲル濾過樹脂による極性中分子ペプチドの選択分離法を検討したが、ゲル濾過樹脂による分画は期待した程の効果は得られなかった。そこで、現在、ゲル濾過樹脂の種類、塩濃度、アルコール濃度を再検討している。本研究項目では、放線菌から網羅的に中分子ペプチドをスクリーニングする予定であり、同属種放線菌の重複を避けるために、MALDI-TOF-MSによる属種分類とインハウスデータベースの構築を計画している。そこで、20種の同定済みの放線菌をモデルとして、各種実験条件を最適化し、その手法を確立した。
研究項目B(極性中分子ペプチドの網羅的ポリカチオン修飾と生理活性評価):中分子ペプチドをε-PL-PEG4-azideあるいはoligo(β-Lys)-PEG3-azideでポリカチオン修飾するためには、中分子ペプチドにDBCO基を導入しHuisgen環化反応を利用する。そこで、既存の極性中分子ペプチドをモデルとして、これら化合物へDBCO基を導入しポリカチオン修飾する実験手法を確立した。 研究項目C(生理活性を有する極性中分子ペプチドおよびその分子標的タンパク質の同定):R3年度に実施予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目A:R2年度は、既存中分子ペプチド化合物をモデルとして、イオン交換樹脂とゲル濾過樹脂による極性中分子ペプチドの選択分離法を検討した。イオン交換樹脂について各種検討したところ、強陽イオン交換樹脂を用いることで1級アミンを有する中分子ペプチドを濃縮できた。樹脂に結合した中分子ペプチドは、高塩濃度の緩衝液または酸・塩基で溶出することが可能である。溶出液からの脱塩と中分子ペプチドの分画はゲル濾過樹脂によって達成できると予想したが、期待した効果は得られなかった。そこで、現在、ゲル濾過樹脂の種類等を再検討している。本研究項目では、放線菌培養液からの網羅的な中分子ペプチドのスクリーニングを計画している。そこで、同属種放線菌の重複を避けるために、MALDI-TOF-MSによる属種分類とインハウスデータベースの構築を検証した。20種の同定済みの放線菌をモデルとして、各種実験条件を最適化したところ、培養液から得られた菌体を洗浄後、ガラスビーズで破砕した抽出液を用いることでMALDI-TOF-MSによる放線菌の属種分類が可能であることを見出した。
研究項目B:中分子ペプチドをε-PL-PEG4-azideあるいはoligo(β-Lys)-PEG3-azideでポリカチオン修飾するためには、中分子ペプチドにDBCO基を導入しHuisgen環化反応を利用する計画である。そこで、既存の極性中分子ペプチドをモデルとして、これら化合物へのDBCO基導入を検討した。その結果、DBCO-NHSエステル体を用いることで、中分子ペプチドの1級アミンにDBCO基を導入できた。DBCO基を導入した中分子ペプチドは、ε-PL-PEG4-azideあるいはoligo(β-Lys)-PEG3-azideと混ぜるだけのクリックケミストリーで容易にポリカチオン修飾を達成した。
研究項目C:R3年度に実施予定。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目A:R3年度は、なるべく早期にゲル濾過樹脂による中分子ペプチドの分画条件を最適化し、放線菌培養液からの効率的な中分子ペプチド化合物の選択分離法を確立する。研究室の放線菌ストックを用い、同属種放線菌の重複を避けるために、MALDI-TOF-MSによる属種分類とインハウスデータベースの構築を行い、200種の放線菌の培養液から中分子ペプチドを選択分離し、中分子ペプチドのライブラリーを構築する。
研究項目B:200種の中分子ペプチドのライブラリーについて、網羅的にDBCO基を導入した後、ε-PL-PEG4-azideあるいはoligo(β-Lys)-PEG3-azideでポリカチオン修飾する。ポリカチオン修飾特異的に動物細胞に対して生育阻害を示すサンプルを探索する。スクリーニングが順調に進展する場合は、ライブラリーを3000種まで増やし、継続する。
研究項目C:生理活性を示した極性中分子ペプチドをHPLC/ESI-TOF-MSで同定する。ポリカチオン修飾した極性中分子ペプチドは、陽イオン交換カラムで簡便に精製することが可能であり、かつ、アニオン性色素を用いたプルダウンによっても沈殿回収することができる。そこで、ポリカチオン修飾した極性中分子ペプチドと動物細胞の無細胞抽出液を混合し、陽イオン交換カラムとアニオン性色素を用いたプルダウンによって極性中分子ペプチドとともに分子標的タンパク質を共精製し、HPLC/ESI-TOF-MSにより分子標的タンパク質を同定する。
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Causes of Carryover |
参加予定の学会が中止またはオンライン開催になったため、旅費を使用しなかった。R3年度の後期は学会を通常通り開催されると予想され、旅費として使用する予定である。
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