2020 Fiscal Year Research-status Report
有機化学を基盤とした人獣共通感染症に対する複合糖質ワクチン開発への挑戦
Project/Area Number |
20K21289
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 大介 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00509929)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 複合糖質ワクチン / ラムノシル化 / 人獣共通感染症 / 鳥類病原性大腸菌 / 糖鎖抗原 / グリコシル化反応 / 有機合成 / ホウ素触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗生物質の多用により多剤耐性を獲得し、かつヒトにも感染性を示す人獣共通感染型APECの出現予防を指向し、申請者らが独自に開発してきた「ボロン酸触媒を用いた位置および立体選択的β-ラムノシル化反応」を用いたAPEC O1糖鎖抗原候補の化学合成および新規複合糖質ワクチンの創製を目的としている。申請者は、本研究の予備実験および初年度の研究で具体的に以下の成果を得た。 【予備実験までの成果】(i)APEC O1の糖鎖抗原候補の五糖1の立体選択的な合成を達成した。(ii)1とキャリアタンパク質(BSA)とを複合化したワクチン候補1Aの合成を達成した。(iii)APEC O1をニワトリに投与後、そのニワトリから抗APEC O1 LPS抗体を含む血清aを得た。 【本年度の研究成果】(i) 五糖1の部分構造を有する三糖2および二糖3を合成後、これらとBSAとを複合化したワクチン候補2Aおよび3Aの合成を達成した。(ii)合成した1A-3Aと血清aとの親和性をELISA法により評価した結果、1Aが血清aに含まれる抗APEC O1抗体に対して高い親和性を示すことを見出し、五糖1がAPEC O1に対するワクチン開発に有用な抗原候補糖鎖であることを明らかにした。(iii) 1とキャリアタンパク質(KLH)とを複合化したワクチン候補1Bを合成した。(iv)1Bをニワトリに投与後、血清bを得た後、抗APEC O1抗体産生量をELISA法により評価した。その結果、1B投与群は、対照群と比較して、優位に抗APEC O1抗体が産生されることを見出し、1BがAPEC O1感染を予防する有用なワクチン候補物質であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(i)本年度の目的であった、APEC O1に対するワクチン開発に有用な抗原候補糖鎖の構造を特定することに成功したため。(ii) APEC O1の抗原候補五糖1とタンパク質KLHとを複合化したワクチン候補1Bが、APEC O1感染を予防する有用なワクチン候補物質であることを明らかにしたため。(iii)本研究のこれまでの成果を取りまとめ、学会で成果発表を行うだけでなく、学術誌への掲載プレスリリースを通して、積極的に社会・国民へ発信できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(i)新たなAPEC O1の糖鎖抗原候補として五糖4および5を合成後、これらとキャリアタンパク質とを複合化した4Aおよび5Aを合成する。 (ii) 4Aおよび5Aを固定したプレートを調製後、血清aを用いてELISAアッセイを行い、各複合糖質が抗APEC O1 LPS抗体と親和性を示すか定量的に評価する。以上の構造活性相関研究により、複合糖質ワクチンの抗原に最適な糖鎖構造を明らかにする。 (iii) 複合糖質1Aよりも有力な候補があった場合には、その糖鎖構造を含むワクチン候補を合成後、ニワトリに投与し、血清cを得る。 (iv) 血清cを用いたELISAアッセイを行い、抗APEC O1 LPS抗体の産生量を定量的に評価する。 (v)抗体産生量が高かったワクチン候補をニワトリに投与後、APEC O1を投与し、複合糖質のワクチンとしての有効性を実証し、本研究の目的を達成する。 また、これまでの研究成果を取りまとめ、国内外の学会で成果発表を行う。さらに、学術誌への掲載を通して、積極的に社会・国民へ発信する。なお、今後の研究の障害となる問題点はない。
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