2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K21293
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 恭子 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70366574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松藤 寛 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70287605)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / γ-アミノ酪酸 / 腸管上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌叢の構成と腸管GABA濃度の関係について、マウスへ抗生物質、プロバイオティクスを経口投与して解析を行った。経時的に糞便を採取し糞便抽出液中のGABA濃度をUPLC-MS/MSにより測定した結果、特定の抗生物質あるいはビフィズス菌の投与によりGABA濃度の有意な上昇が認められた。また、糞便および盲腸内容物より調製したDNAを用いた16S rRNA遺伝子配列の次世代シークエンスにより、腸内細菌叢の構成の変化、および腸管GABA濃度の上昇と相関して増加あるいは減少する菌種の存在が認められた。高架式十字迷路試験により不安行動を解析した結果、オープンアームへの侵入回数がビフィズス菌投与群で有意に増加していた。次に、マウスの腸内容物より選択培地を用いて腸管GABA濃度の上昇あるいは減少と強い相関を示した候補菌の単離を試みた。得られた菌株について16S rRNA遺伝子配列を確認後、グルタミン酸添加培地あるいはGABA添加培地で培養した際の培地中のGABA濃度およびグルタミン酸濃度を測定し、GABA合成能・消費能を評価した。その結果、高いGABA産生能を持つ菌株が1株見出された。 一方、複数の腸管上皮細胞株を用いてGABA受容体各サブユニットの発現パターンを解析した結果、腸管上皮細胞にGABA受容体が発現すること、サブユニットの発現パターンが細胞株により異なることが明らかになった。さらに、腸管上皮細胞株をGABAで刺激した際の細胞内シグナルを解析し、GABA刺激によりErkのリン酸化の変化が誘導され、その経時的変化はサブユニットの発現パターンにより異なることを示した。 これらの結果より、腸管GABA濃度は腸内細菌叢の構成に依存し、腸管内GABAが不安行動等の宿主生理機能に影響を及ぼすことが明らかになった。また、腸管内GABAが腸管上皮を介して作用する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腸管GABA濃度が腸内細菌叢の構成に依存し、また宿主の行動特性に影響を及ぼすことを明らかにすることができた。しかし、行動特性の解析の一部は、今年度に計画していたものが来年度に持ち越しとなった。また、腸管GABA濃度と相関を示す腸内細菌グループを特定し、高いGABA産生能を持つ腸内細菌株を見出した。一方、腸管上皮細胞株を用いた解析により、GABAが腸管上皮細胞にシグナル伝達を誘導することを示すことができた。ただし、誘導シグナルが腸管上皮機能にどのような影響を及ぼすかの評価を完了するには至らなかった。以上、およそ計画に沿って研究を遂行することができたが、一部に遅れが生じている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により腸管内GABAが腸管上皮細胞を介して宿主の生理機能を調節する可能性が示されたことから、今後、観察された行動特性の変化が腸管に発現するGABA受容体に依存するものかどうか解析を行う。合わせて、腸管上皮機能に及ぼす影響をin vitro試験およびin vivo試験により評価する。これらの解析により、腸管GABAの作用機構を明らかにする。また、これまでに腸管GABA濃度の上昇が不安行動に及ぼす影響を明らかにしたことから、今後はさらに記憶行動に及ぼす影響も評価する。さらに、特定したGABAを高産生する腸内細菌について、マウス腸管におけるその存在比率と腸管GABA濃度の相関について解析を行い、腸内細菌叢への介入による腸管GABA濃度制御の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
シグナル伝達解析条件の確立に予定より時間がかかったこと、コロナ禍による入構制限・研究室活動の制約があったことから解析の一部が来年度に持ち越しとなり、令和2年度の予算の一部が繰り越しとなった。次年度の研究費は、実験用試薬(GABA受容体や各種シグナル分子等に対する抗体、FITC標識デキストラン、GABA受容体アンタゴニスト、GABA定量のための誘導体化反応試薬、マウス腸管からの上皮細胞の精製に用いる酵素や細胞分離用磁気ビーズ、ウェスタンブロッティングに用いる基質やフィルム、定量PCR試薬など)、実験用消耗器具(細胞培養用フラスコ、プラスティックディスポーザブルチューブ、トランズウェルインサートなど)、実験動物(マウス)の購入に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)