2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms for apyrene sperm differentiation
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20K21299
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
金児 雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90633610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐原 健 岩手大学, 農学部, 教授 (30241368)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 無核精子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
進化的なチョウ目昆虫は、核のある有核精子だけでなく核のない無核精子を作る。無核精子は特殊な精子ではあるにも関わらず、受精に必須であることから、積極的に産生される。この2種類の精子は、精巣の同じ精室内で同一の精原細胞から作られる。しかし、どのようにして有核精子と無核精子を作り分けているか、その分子機構の詳細は明らかになっていない。これまでに申請者らは、昆虫ホルモンが無核精子形成を阻害することを見出した。また2019年には、カイコsex lethal遺伝子(BmSxl)のゲノム編集によるノックアウトカイコにおいて、無核精子の形態異常が報告された。そこで我々は、sex lethalと昆虫ホルモンを中心として、カイコを用いて無核精子形成機構の解明に取り組んでいる。そこで昆虫ホルモン投与個体におけるBmSxl遺伝子の発現量の変動を測定したところ、BmSxl遺伝子の発現は、昆虫ホルモン投与によって有意に発現量が抑制された。また、BmSxl TALEN mutant個体に対して昆虫ホルモンを投与した結果、無核精子の生産が有意に抑制された。これらのことから、カイコの無核精子生産においてBmSxl遺伝子は昆虫ホルモンの下流で働いていることが示唆された。加えて、栄養シグナル関連遺伝子についても、昆虫ホルモンの影響およびBmSxl TALEN mutant個体での発現状態を検証し、無核精子生産への関与を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昆虫ホルモンとBmSxl遺伝子との関連性に焦点を当てて、検証を進めたところ、昆虫ホルモンの下流でBmSxl遺伝子が働くことを強く示唆する結果を得た。また無核精子生産の昆虫ホルモンへの応答時期を確定するため、カイコ個体に昆虫ホルモンを差時的に投与し、それらの個体から精子数のカウントのためのサンプルを調整した。昆虫ホルモン投与個体における遺伝子発現解析を進めた結果、多数の応答遺伝子を得た。これらのことから、申請研究は順調に進められているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昆虫ホルモンに応答し精巣内で発現量が変動する遺伝子が得られた一方、BmSxl TALEN mutant個体において発現量が変動する遺伝子は見出せなかった。そこで、BmSxlの下流で働く遺伝子の探索のために、正常個体とBmSxl TALEN mutant個体の精巣を用いてRNAシークエンスを行う。得られた変動遺伝子に対して、正常個体、BmSxl TALEN mutant個体および昆虫ホルモン投与個体の精巣間における発現を、定量PCRにより比較することで、無核精子形成の分子機構に関わる遺伝子を見出す。さらに無核精子形成の昆虫ホルモンへの応答時期を詳細に解析し、遺伝子発現の挙動と比較することによって、無核精子形成の分子機構の全体像の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、予定していた打ち合わせや学会等のほとんどがオンライン開催となり旅費が抑制された。また、感染リスクを避けるため、飼育等にかかる人員を抑制しため、人件費・謝金等の経費を使用しなかった。今後、RNAシークエンスおよび多数の発現解析を行うため、上記の理由で生じた次年度使用額は、翌年度分に加えて使用する予定である。
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