2020 Fiscal Year Research-status Report
Approach toward creating a cytoplasmic male sterility line from a normal cultivar by genome-editing of nuclear genes
Project/Area Number |
20K21300
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳥山 欽哉 東北大学, 農学研究科, 教授 (20183882)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 育種学 / 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / 植物 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
一代雑種品種の育種に細胞質雄性不稔性(CMS;ミトコンドリアゲノムと核ゲノムの相性が悪く花粉が死滅する現象)が使われている。ミトコンドリアゲノムのドナーとしてこれまでは近縁野生種などが利用されてきた。本研究では、普通の栽培イネ品種もミトコンドリアゲノムに細胞質雄性不稔性を発現できる潜在遺伝子を隠し持っており、核ゲノムに制御遺伝子(=稔性回復遺伝子)を合わせ持っているために顕在化しないが、この稔性回復遺伝子を破壊すれば、細胞質雄性不稔性が顕在化すると考えた。標準的な「普通の栽培品種」から、価値の高い「CMS系統」を生み出す新システムを、ゲノム編集を駆使して開発することを目的としている。 本研究で用いるCMS系統(TG-CMSと命名)は、 核がアフリカイネのO.glaberrima、 細胞質が台中65号に由来している。 令和2年度は TG-CMSのCMS関連遺伝子の同定を目的として調査を行った。 花粉の表現型調査の結果、 既報のWA-CMSと同様な潰れた花粉が観察されたことから、 WA-CMSの原因遺伝子と相同性のあるorf288をCMS原因遺伝子の有力候補と考えた。ノーザンブロット解析を行ったところ、 稔性回復遺伝子の有無により転写パターンが変化したため、 orf288がCMS原因遺伝子と考えられた。 WA-CMSの稔性回復遺伝子はPPR遺伝子であることが分かっている。 TG-CMSの稔性回復遺伝子がマッピングされた領域にはPPR遺伝子が12個存在した。 葯における発現、 ミトコンドリア移行シグナルの有無、 PPRモチーフの個数をデータベースで調査することにより、 その中の3個が有力候補として考えられた。これらの遺伝子を破壊すれば、CMS系統を生み出すことができると期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<進捗状況>稔性回復遺伝子の候補として同定したPPR遺伝子をゲノム編集技術CRISPR-Cas9を用いて遺伝子破壊し、雄性不稔を示すか調査するために、ゲノム編集用のベクターを構築し、台中65号と稔性回復系統の形質転換実験を開始した。また、ミトコンドリアのCMS原因遺伝子候補として同定したorf288についてゲノム編集技術mitoTALENを用いて遺伝子破壊し、稔性が回復するか調査するために、CMS 系統の形質転換実験を開始した。しかし、形質転換植物体がまだ得られていないので、若干遅れていると判断した。 <理由>アフリカイネ(O. glaberrima)のCMS 系統の形質転換実験において、通常の日本型イネの形質転換用プロトコールを用いているが、当初想定したよりもカルスが褐変して枯死するものが多く、形質転換植物体がまだ得られていないため。
|
Strategy for Future Research Activity |
アフリカイネ(O. glaberrima)の形質転換植物体がまだ得られていないので、R3年度は形質転換用プロトコールの改良などを行い、この実験を強化して行う。作出した形質転換植物の稔性を調査する。台中65号のPPR遺伝子を破壊することで雄性不稔性を示すか、また、CMS系統のorf288を遺伝子破壊することで稔性が回復するかを調査する。これらを実証できれば、仮説通りに新システムの開発成功となる。
|
Causes of Carryover |
<理由>アフリカイネ(O. glaberrima)の形質転換実験において、カルスが褐変して枯死するものが多く、形質転換植物体がまだ得られず、形質転換植物体のDNA解析に必要な実験の経費を使わなかったため、次年度使用額が生じた。 <使用計画>形質転換植物体がまだ得られていないので、次年度以降、この実験を強化し、形質転換用プロトコールの改良などを行って形質転換植物体を作出し、遺伝子破壊が計画通りに行われたかを明らかにするためのDNA解析を行う。これらの目的を達成するために、助成金を利用する計画である。
|