2020 Fiscal Year Research-status Report
わずかな傾きがイネの受粉を不安定にし,高温不稔を助長する仕組みを画像で解明する
Project/Area Number |
20K21308
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | イネ / 受粉 / 安定性 / 穂の傾き |
Outline of Annual Research Achievements |
高温水田におけるイネの受粉と稔実の観察から,稲穂の傾きはイネの稔実の高温耐性に大きな影響を与えている可能性があると考えている.そこで,まず,どの程度の傾きがイネの受粉に影響を与えるかを明らかにするために,ポットに栽培した開花期のイネに,0°,15°,30°,45°の傾きの処理を与え,柱頭に付着する花粉数及び柱頭上で発芽する花粉の数,および葯の裂開に与える影響を調べた.0°から45°の範囲で,傾きが大きくなるほど柱頭に付着した花粉の数が20粒未満の穎花の割合(TP20)および柱頭上で発芽した花粉の数が10粒未満の穎花の割合(GP10)が増加したが,葯の裂開には影響を及ぼさなかった.傾きが大きくなるほど柱頭上での花粉の発芽率も低下したが,傾くにしたがってGP10が増加する主な原因はTP20が増加したためであった.30°の傾きはTP20を大きく増加させた.イネの受精には,柱頭上に10粒以上の発芽花粉が必要とされており,30°の傾きは大きく稔実率を低下させるものと推察された. この実験結果に基づき,群落内の穂の位置と穂の傾きがイネの受粉と稔実に与える影響を調査した.ポット栽培した開花期のイネを穂の高さが群落上,群落表層,群落内になるように設置し,傾けない区,30°傾ける区を設けた.いずれの高さにおいても,30°傾けることで稔実率が低下し,TP20,GP10は増加した.不稔率はGP10と相関し,GP10はTP20と相関した.以上の結果から,30°の穂の傾きは実際の群落環境でも受粉を不安定にすることで稔実を低下させると考えられた.このことから,直立した穂は受粉の安定性からみて重要な栽培・育種目標であると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付内定の時期が遅いこととコロナの感染拡大への備えのため,新規の実験を行うことが難しかったが,これまでのモデル実験のデータをまとめることで,穂の角度と受粉や稔実との関係をシンプルな環境で定量的に把握することができたため,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降も新型コロナウィルスの感染拡大のために,研究活動・実験が著しい制限を受けている.十分な材料を準備して実験を行うことができないが,何とか少量の材料を作成し,昨年度購入したカメラを用いて開花中の葯の撮影を行い,葯の位置関係を明らかにする方法を模索する.一方で,圃場条件で様々な草型のイネを用いて収集したデータから,穂の角度と受粉・稔実との関係の定量的な関係を抽出する.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染の拡大のため,十分な実験の準備・実施ができず,物品購入の検討材料が不十分と判断して一部の物品の購入を見送った.このために次年度使用額が発生した.本年度も同じ理由で実験の完全な実行は難しいが,小規模でも実験を行い,物品の購入の判断材料とし,必要な物品を整えるように努力する.
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