2021 Fiscal Year Research-status Report
わずかな傾きがイネの受粉を不安定にし,高温不稔を助長する仕組みを画像で解明する
Project/Area Number |
20K21308
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
Keywords | イネ / 受粉 / 安定性 / 穂の傾き / 不稔 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.2020年度までに,ポットを用いたモデル実験の結果から,穂の傾きがイネの受粉と稔実に対し実用レベルで負の影響を与えることが明らかとなった.そこで,本年度は,開花・受粉の観察に加えて,これまでに海外の高温不稔が頻発する水田において様々な品種の受粉の安定性と不稔の安定性を検討した実験の結果について,穂の傾きが受粉の安定性に与える影響をPath解析によって検討した.中国においてコアコレクションを用いて行った実験の解析からは,穂の傾きが,受粉の安定性(柱頭に付着した花粉の数が10粒以上の穎花の割合)を通じて高温条件下におけるイネの稔実にネガティブな影響を与えることが示された.一方,フィリピンにおいて現行の生産者に人気の高い品種や普及が期待されている品種を使った実験の解析を行った結果からは,穂の傾きが受粉や稔実に与えた影響は有意ではなかった.フィリピンで人気の高い現行の品種はすべて短稈で,開花時の穂の傾きの変異が極めて小さいことが有意な影響が検出されなかった原因の一つであると考えられた. 2.2020年度までのデジタルマイクロスコープ等を用いた観察から,葯基部の裂開の角度には品種間差異があることが明らかになった,そこで岐阜県奨励品種について葯基部の裂開の角度と開花時の高温耐性との関係を検討したが,有意な関係は認められなかった.このことから,穂の傾きと受粉の安定性との関係に裂開口の角度は関与していないと考えられた
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デジタルマイクロスコープを用いた観察がイネの受粉における葯からの花粉の落下のタイミングや受粉時の葯の形状の記録にどの程度有効であるかがわかってきた.また,栽培されているイネの穂の傾きが,実際にイネの受粉の不安定化を通じて受精・稔実に負の影響を与えることが明らかにできた.以上からおおむね順調と判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度となる.デジタルマイクロスコープによる観察を進める.傾斜させた穂の開花・受粉を観察することで,傾斜による受粉の不安定化が葯の花粉放出の遅れによるものか,あるいは花粉放出の位置と柱頭の位置との関係によるものかを探る. 他方で,ミャンマーやインドの高温水田で様々な水稲品種を栽培して得られたデータの解析を進め,穂の傾きが実際の高温条件下での水稲の栽培の中でどの程度受粉と受精の安定性にかかわっているかを検討する.
|
Causes of Carryover |
新型コロナ蔓延のため,学生等による観察・サンプリングが遅れたため,一部の調査の実施を延期している.次年度に延期した一部の実験を実施するための物品費,人件費,英文校閲費などとして使用する.
|