2020 Fiscal Year Research-status Report
広宿主域・高活性の卵移行リガンドの開発による昆虫のゲノム編集革命の創出
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20K21311
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大門 高明 京都大学, 農学研究科, 教授 (70451846)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 昆虫 / 卵母細胞 / ビテロジェニン / 受容体 / CRISPR / Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、昆虫のメス成虫にインジェクションすることでゲノム編集が可能となる、革新的なゲノム編集ツールを開発することを目的とする 。2020年度は、以下の研究を行った。 (1) 卵移行リガンドの開発:卵黄タンパク質の前駆体であるビテロジェニンのフラグメントをGFPに融合し、そのタンパク質をメス成虫に注射することによって、卵母細胞への取り込みを評価する系を用いて、高宿主域・高活性の卵移行リガンドの探索を試みた。現在までに約90aaの領域に卵移行活性があることを見出しているが、現在、それをさらに断片化することによって、より使いやすいリガンド(タグ)の開発を進めているところである。 (2) 成虫への注射によるゲノム編集法の開発:(1)に挙げた新規タグのスクリーニング・開発と並行して、市販の高活性Cas9タンパク質の注射によるゲノム編集法の可能性を検討した。Cas9タンパク質をsgRNAと混合し、それをコウチュウの一種(コクヌストモドキ)に注射したところ、次世代にゲノム編集個体が生じることが判明した。注射の時期、同時に用いる試薬等を検討し、この系の最適化を図ったところ、非常に高い効率でゲノム編集を引き起こすことができる条件を見出すことができた。この方法・条件を、ゴキブリ(通常の胚子への注射が事実上不可能)でテストしたところ、ゴキブリ(チャバネゴキブリ)においても、ゲノム編集個体を作出することができた。この方法をparental CRISPRと呼称することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)の卵移行リガンドの開発は未だ途上であるが、(2)のparental CRISPR法によって、ゴキブリのゲノム編集を成功させることができた。parental CRISPRは非常に簡便であるため、今後、あらゆる昆虫においてfirst optionとなる可能性がある。このブレイクスルーをもって、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
卵移行リガンドの開発を進めるとともに、parental CRISPR法の適用可能範囲を調査していく。後者では、卵胎生昆虫(ニクバエ類またはアブラムシ類)をターゲットとすることで、従来法では不可能であった昆虫におけるゲノム編集を成功させたい。他にも雑多な微小昆虫における可能性を検証していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、夏~秋の実験の遂行に遅滞が生じたため、消耗品費の使用が当初計画よりも減少した(直接経費総額の約1割分)。この分は、2021年度の研究の遂行に使用したい。
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