2021 Fiscal Year Annual Research Report
カメムシに加害されたダイズは、いかにして次世代の開花・結実時期を変化させるのか
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20K21316
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
徳田 誠 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60469848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 義人 茨城大学, 農学部, 教授 (90222067)
鄭 紹輝 佐賀大学, 農学部, 教授 (90253517)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ホソヘリカメムシ / ダイズ / フェノロジー / 継代効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホソヘリカメムシは、ダイズの重要害虫であり、吸汁によりダイズに「青立ち」と呼ばれる植物体が秋まで緑色のままで種子への転流が進まず、結実が遅延する現象を誘発し、機械収穫効率および種子品質を低下させる。この症状は、ダイズの原種であるツルマメでも確認される。「青立ち」により植物側の生産性は低下する一方、カメムシにとっては吸汁可能期間が延長されることから、昆虫側にとって適応的な現象、すなわち、昆虫が積極的に寄主植物を操作し、自身に有利な状態に改変した結果と解釈できる。ホソヘリカメムシの体内には植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン)が存在しており、これらを利用してダイズを操作し、青立ちを誘発している可能性がある。カメムシによるダイズ青立ち誘発メカニズムの解明を目的に、ダイズ(cv. Bay)の子実肥大盛期(R6)において、カメムシ放飼および各種植物ホルモン処理を実施し、葉の光合成速度、SPAD値(葉の緑度の指標)及び窒素含量の推移、植物ホルモン濃度、青立ち程度、収量構成要素を調査した。カメムシ放飼処理によって、SPAD値及び葉内窒素含量の低下が遅くなり、青立ち指数も対照区より高くなった。ダイズ葉内における活性型サイトカイニン(iP)の前駆体であるiPR濃度が上昇した。また、各種植物ホルモン処理は青立ち指数を高めた。カメムシ放飼処理区のダイズの反応は、サイトカイニン処理区と類似していた。青立ちが生じた植物の表現型の特徴から、カメムシが体内に有しているサイトカイニンによりシンク機能が促進され、老化抑制作用が働いている可能性がある。また、親世代でカメムシに加害されたツルマメの次世代を栽培した結果、対照区と比べ、結実時期が有意に早まり、種子数は減少したものの、種子サイズが大きくなった。これらの反応は、カメムシによる結実時期の加害を避けるための世代を超えた防御応答の可能性がある。
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Research Products
(6 results)