2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21323
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Research Institution | Ishihara Sangyo Kaisha,Ltd. (Central Research Institute) |
Principal Investigator |
森 光太郎 石原産業株式会社 中央研究所, 生物科学研究室, グループリーダー (40344840)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 生物農薬 / ミヤコカブリダニ / 共生微生物 / マイクロバイオータ / 16S rRNAメタゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はミヤコカブリダニに微生物を人為的に共生させる系の構築を目的の一つとしている。この構築に際し、そもそもミヤコカブリダニがどのような共生微生物叢を体内に持っているかは非常に有用な情報であるが、現在までに報告例はない。もともと微生物を共生させているのであれば、カブリダニにホストとしての生物学的ポテンシャルがあると推定される。また解析から得られた微生物種の情報からどういう分類群の微生物が共生しやすいのか、シンビオントに求められる特性の推定にも有用と考えられる。今期はこの情報を得るため、次世代シーケンスによりカブリダニから抽出したDNAに含まれる微生物由来の16S rRNA遺伝子配列を解析して微生物叢の推定を行った。まずカブリダニ微生物叢のDNAを抽出する方法を検討した。虫体の破砕方法や条件、虫体破砕後のDNA抽出方法、16S rRNA配列増幅方法を確立した。確立した方法にて調製したDNAサンプルをアンプリコンシーケンスに供試した。供試したのは、ミヤコカブリダニのメス成虫と同卵から抽出したDNAである。解析の結果、メス成虫には62、卵には100のOTUが検出された。すなわち、本種は生活史を通じてバクテリアを共生させていると推察された。Jaccard指数はメス成虫と卵が0.571で、比較として用いた別種(スワルスキーカブリダニのメス成虫)との値(メス同士:0.854、卵とスワルスキーカブリダニ:0.878)よりも類似性が高かった。ミヤコカブリダニのメス成虫と卵で確認されたOTUのうち80%を占める3種類のOTUは共通であった。現在、シンビオントの特性を明らかにするため、さらに詳しくデータ解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA抽出方法は別のダニ類、昆虫類の共生微生物を対象にした方法を参考にしながら最適な方法を見出すことができた。この探索に時間がかかったが、年度内に次世代シーケンス解析を委託し、結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ミヤコカブリダニの共生微生物叢の解明については、16S rRNA遺伝子配列の解析を通じて共生微生物に共通した特性(分類群など)がないかを明らかにする。その際、別の系統のミヤコカブリダニや別種のカブリダニの微生物叢も解析に供試し、共通性を調べることも重要と考えている。 カブリダニによる大腸菌摂食、観察系の確立と人為淘汰系については、まず、ミヤコカブリダニの自家蛍光を確認し、その自家蛍光と被らない蛍光タンパク発現大腸菌を取得する。大腸菌をカブリダニ体内に取り込ませる方法を確立し、大腸菌を取り込ませたカブリダニを観察する系を構築、人為選択系を構築していく。
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Causes of Carryover |
・新型コロナ流行の影響を受けて研究開始が遅れ、資材の受注も遅れがちであった。また、次世代シーケンス解析費用の支払いが次年度になったため、次年度使用額が生じた。次年度は、上記の【今後の研究の推進方策】で述べたように別のサンプルの解析も必要となったため、次世代シーケンス解析を多数実施する計画である。 ・コロナ禍の状況次第では、上記の追加解析に供試するため、国内に生息する別系統のミヤコカブリダニの採集を実行したいと考えている。この別系統の飼育用資材の購入も計画に入れる。 ・人為選択系の構築に向けて、蛍光タンパク遺伝子、大腸菌株、顕微鏡観察用の資材等購入する計画である。
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Research Products
(2 results)