2021 Fiscal Year Research-status Report
菌根菌の埋土胞子は千年生きるのか:地質ボーリングコアを用いた挑戦
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20K21325
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奈良 一秀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60270899)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 埋土胞子 / 菌根菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林の土壌中に存在する菌根菌の埋土胞子は、撹乱後に侵入する樹木実生の菌根形成を促進し、その定着を助ける重要な働きを持つ。一部の菌種、特にマツ科に特異的に共生するショウロ類の埋土胞子は少なくとも10年程度は共生能力を維持することが明らかになっているが、それを超えた超長期間の生存能力については不明である。そこで本研究では、数十年から数百年前の堆積物が保存されている地質ボーリングコアに着目した。特に海岸後背湿地のボーリングコアには津波堆積物が保存されており、海岸クロマツ林由来の菌根菌の埋土胞子が含まれている可能性がある。本研究では、これら地質試料中の埋土胞子の感染能力について、マツ苗を用いたバイオアッセイ試験によって調べ、菌根菌埋土胞子の超長期間の休眠能力を明らかにすることを目的とする。 今年度は昨年度から継続していたバイオアッセイ試験の結果、目的の菌根菌の感染が観察できなかったことから、ハイマツ林由来の埋土胞子が採取したボーリングコアには存在しないことが確認された。このことから、ハイマツと共生するショウロ類の埋土胞子の生存期間は100年を超えない可能性が考えられた。海岸の地質ボーリングコアについては、海岸林由来の砂土が混入した試料がえられる適切な調査地を引き続き探索中である。一方、代替のアプローチとして、マツノザイセンチュウ病によって過去に枯死したヤクタネゴヨウ生育地の埋土胞子について調べたところ、一部の調査地においてショウロ類の埋土胞子の生存を確認できた。今後はこのサンプルの遺伝的組成について、現存する近隣集団と比較する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナの影響により活動が制限されたため、予定していた調査が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き海岸林の埋土胞子が混入している地質ボーリングコアの探索を行うほか、代替アプローチとして有効と判明したマツ類の枯損跡地での調査も検討する。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で現地調査が計画通りに行えなかったため
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