2020 Fiscal Year Research-status Report
魚類の耳石微量元素を用いた環境ストレス暴露情報の抽出
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20K21328
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 洋嗣 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10447592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Strussmann C.A. 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (10231052)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 環境ストレス / 海洋汚染物質 / 耳石 / 微量元素 / トウゴロウイワシ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地球温暖化や海洋酸性化、大規模海洋開発など、種々の環境ストレスが海洋生物に悪影響を与えることが危惧されている。しかし魚類については、未だ正確な環境影響評価技術の開発には至っていない。魚類内耳に存在する耳石は、多くの魚類で日周期的に輪紋を形成するため年齢査定に利用されることが多いが、環境水中あるいは生体内の元素を取り込み伸長・増大するという特性がある。本研究では、魚類の環境ストレス影響評価技術の確立を目指し、トウゴロウイワシ類の耳石に含まれる各種元素量と環境ストレスの因果関係を調査する。本年度は、各種環境ストレスの暴露試験に先立ち、汽水性トウゴロウイワシを用いて、暴露試験開始から終了時までの期間に形成された耳石領域を把握するために不可欠な耳石標識に用いる蛍光色素ALC(アリザリンコンプレクソン)およびOTC(オキシテトラサイクリン)の適性濃度の検証と、標識が耳石中の元素に与える影響、さらに環境水中の蛍光物質がどの程度の速度で耳石中に取り込まれるのかを調査した。ALCとOTCを異なる濃度で溶解した飼育水中にペヘレイ仔稚魚を24時間浸漬したのち、6日後に再度24時間浸漬し、耳石を2回標識した。2回目の標識後に耳石を摘出・包埋・研磨し、蛍光顕微鏡下で輪紋を観察・計数したのち、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて、蛍光標識が取り込まれた耳石部位の元素含有量を調べた。その結果、耳石上に2本の蛍光標識部位が存在し、その間には6本の輪紋(日輪)が確認されたことから、環境水中の蛍光物質が即日にトウゴロウイワシの耳石中に取り込まれたことが明らかとなった。また、EPMAの結果、蛍光標識は耳石の元素含有量に影響を与えないことが示された。以上のことから今後のストレス暴露試験に用いるための耳石蛍光標識の最適条件を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は新型コロナ感染症に伴う緊急事態宣言発出のため、本研究の指標種の候補としていたトウゴロウイワシ類のうち、海産のHypoatherina tsurugaeおよびAtherion elymusに関しては、十分な数を捕獲することができず、予備試験を行うことができなかった。しかし、汽水性トウゴロウイワシ目魚類であるO. bonariensisを用いて、耳石観察に不可欠な蛍光色素の適正濃度の検証や、環境水中の物質がどの程度の速度で耳石中に取り込まれるのか等、予定していた試験を行うことができた。また、次年度に向け海産魚用の飼育設備を新たに設置した。令和3年度は、海産のA. elymusを中心に、O. bonariensisで得られた耳石標識技法を適用し、各種環境ストレス暴露試験を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は比較的捕獲しやすい海産トウゴロウイワシであるAtherion elymusを中心に、各種環境ストレスに対する暴露試験を開始する。供試魚は暴露試験初日と最終日に赤色蛍光色素ALC/OTCに浸漬し、耳石輪紋上に暴露期間を標識する。環境ストレスの強度および暴露期間(2-4週間を予定)は予備試験により決定する。その後、耳石を摘出・包埋・研磨し、電子プローブマイクロアナライザにより各種環境ストレスと耳石微量元素の増減を調査する予定である。また、可能であれば、各環境ストレスが個体の成長、生殖腺発達 (組織学的解析)、体内ストレス/生殖関連ホルモン分泌に与える影響も併せて調査する予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は新型コロナ感染症に伴う緊急事態宣言発出の影響で、当初予定していた海産トウゴロウイワシ類2種の予備的な飼育試験を行うことができなかった。そのため、飼育関連の経費を次年度使用することとした。これらの予算は栄養強化剤、アルテミア、仔稚魚用配合飼料、さらに種苗生産時に用いる飼育器具類の購入に充てる計画である。
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Research Products
(2 results)