2020 Fiscal Year Research-status Report
高分解能魚群探知機による魚種判別への挑戦―機械学習による魚群エコーの特徴分析―
Project/Area Number |
20K21329
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
甘糟 和男 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80452043)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 魚種判別 / 機械学習 / 高分解能魚群探知機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、魚群探知機で見つけた魚群のエコーから魚種を判別できるようにすることである。2020年度は以下の4項目について研究を行った。 1)高分解能魚群探知機の準備:ポータブルタイプの高分解能魚群探知機(EK80、WBT-mini、Simrad-Kongsberg社製)により、定量観測が行えるよう準備した。東京海洋大学の実習艇ひよどりを観測プラットフォームとし、送受波器は気泡を避けるため長さ4mのステンレス製ポールの先端に取り付け、舷側に装備した。4ノットまで航行可能であることを確認した。ACアダプターを電源に使用した場合はエコーデータに電気雑音が混入したため、12Vバッテリーで駆動することとした。また、これにより電源設備のない小型舟艇でも使用できるようになった。距離分解能をできるだけ高くしたいことから、掃引周波数が90~170 kHzのリニアFM(Frequency Modulation)信号を送信波形として使用することとした。8、9月に羽田沖で錨泊し、標準球による較正を実施した。成功したが、船の動揺によりやや困難であった。別途、大型淡水水槽での高精度な較正も行い、定量観測に必要な較正値を得た。 2)魚群エコーの観測:試験観測を8、10、12月に東扇島沖にて行った。サビキ釣りによりカタクチイワシが採集されたことから、観測したエコーは本種のものと推察された。水中カメラによる観測も実施したが撮影できなかった。 3)魚群エコーからの特徴量の抽出:魚群形状(高さ、幅など)を抽出した。観測した魚群エコーは高さよりも横に長い傾向にあることがわかった。魚群内部の個々のエコーについても測定できる可能性を確かめた。 4)機械学習による特徴量の分析:教師なし機械学習の一アルゴリズムであるK-meansによる魚群エコーのグループ化を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は高分解能魚群探知機による定量観測を行うための準備と位置付けていた。定量観測に必要な装備方法、設定検討、較正、試験観測などはすべて行えたことから、おおむね順調に進展している、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
実習艇ひよどりによる観測を本格的にスタートする。昨年度の試験観測では、観測した魚群エコーの魚種確認は容易に行えなかった。これは想定内であったが、今年度の観測では、魚群エコーを観測したら即座に減速・回頭するなどして、サビキ釣りや水中カメラによる魚種確認が極力行えるように工夫する。魚群エコーの特徴量の一つとして魚群形状の抽出は引き続き行っていくが、魚群の内部構造や周囲の物理環境(水温、塩分)も重要であり、これらも特徴量に加えていく。教師なし機械学習による特徴量の分析については、まだ十分なデータがそろっていないことを考慮し、やや試行錯誤的に進めていく。なお、東京海洋大学練習船神鷹丸による観測は、コロナ禍の影響により行えない可能性があるが引き続き検討する。
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Causes of Carryover |
現場観測や水槽実験で得たエコーデータの解析は、プログラムを自作して進めてきた。しかし,プログラムの開発には予想以上の時間を要し、研究の効率的な遂行がやや困難であった。別途、市販の後処理ソフトウェアを所有しているが、現在のバージョンでは解析機能が不十分であった。2021年度4月下旬ごろに、本研究の遂行に必要な解析機能を含む新バージョンがリリースされる予定となったので、後処理ソフトウェアのバージョンアップを行うために次年度使用額が生じた。バージョンアップは次年度使用額内で行う。
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