2020 Fiscal Year Research-status Report
Rotifers as live food for fish larvae: resting egg formation for various rotifer strains
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20K21340
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
萩原 篤志 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (50208419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 禧珍 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (10823437)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ワムシ類 / 休眠 / 耐久卵 / カイアシ類 / 保存 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度では、研究計画に挙げている体長150-300 umのシオミズツボワムシ複合種の6種と、体長50-100 umの超小型ワムシProales similisのほか、休眠現象の報告例がほとんどないカイアシ類のTigriopus japonicusを対象とした。 ワムシでは両性生殖を発現しても、受精後のプロセスが進行せず耐久卵が産出されない例がある。我々はセレン欠乏が精子形成を阻害することを明らかにしているが、本研究を通じて鉄にも同様の作用のあることが分かった。即ちシオミズツボワムシ2種(B. plicatilis、B.rotundiformis)に24-96 mg/LのFeSO4を添加すると、受精率が最大2.3倍(B.p.)、1.7倍(B.r.)増加した。その結果、B. r.では耐久卵形成率も1.79倍増加した。 P. similisでは雄の出現の観察例が皆無であることから、分離性の単性生殖卵に着目して性状を調べた。単性生殖卵に高塩分や低温処理と乾燥処理を施し、10日間保存後、孵化が起こるか検討した。その結果、乾燥以外の処理を行った単性生殖卵を水温25℃、塩分15に戻すと、いずれも孵化が確認された。孵化率は77.9%(対照)、45.7%(4℃)、0.6%(塩分60)、0.08%(塩分90)、0%(乾燥区)であった。また冷蔵後に孵化したP. similisを培養すると、対照区と同様、6日間で1個体/mLから平均11.6個体/mLに増殖した。 T.japonicusについては、培養塩分を徐々に上昇させたところ、塩分164に達した時点で全個体が活動を停止した。10日後、塩分34に戻すと半数以上の受精卵の孵化と一部の携卵雌の活動再開が確認された。一方、乾燥状態になると、塩分34に戻しても受精卵の孵化や成体の活動再開はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シオミズツボワムシの受精率向上因子として新たに鉄の重要性が発見されたこと、近年養殖業で注目されるようになったP.similisの保存手段として単性生殖卵の利用が示唆されたこと、カイアシ類では高密度で量産可能なT.japonicusの保存の可能性が示されたことなど、当初計画以上の成果を挙げることができた。 一方、当初計画では世代同調培養技法を確立し、母ワムシが生じる仔世代のうち末子のみを集める予定であったが、コロナ禍による研究室の入室制限期間が4~5月にかけて約2ヵ月あったことが影響し、成果がまだ得られていない。進捗の遅れを取り戻すべく、3月から研究を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
両性生殖の発現がほとんど見られない複数株のシオミズツボワムシを対象として、世代同調培養により、これらの両性生殖能の検出に取り組む研究を継続する。 昨年度の研究を通じて、鉄がワムシの受精率形成の促進因子であることが明らかとなったが、B.plicatilisでは受精個体の産卵が抑制的に働く現象がみられた。受精雌の個体別飼育により、一個体当たりの耐久卵産出数を求めたところ、B. rotundiformisでは鉄無添加の場合と同様であるが、B. plicatilis では鉄添加(6-96mg/L)によって0.9-2.4個に減少することが分かったが(鉄の無添加時では3.1個)、2種の近縁なワムシ種間で異なる現象を示す原因が新たな不明点として挙がった。ワムシへの鉄の作用機構についてはFe(III)による生理的作用とFe(II)による毒性作用が想定されるが、他の要因を含め、詳細の解明に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
製造業者の都合により、実験に使用する消耗品の納期が遅れているため、次年度使用額が生じた。その購入費用と実験室の消耗品の購入に充てる予定である。
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