2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of cultivation method for high value crops utilizing environmental memory in plants
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20K21346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢守 航 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90638363)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 植物工場 / 高付加価値 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本では植物工場の普及が急速に進められており、作物の高効率生産・高付加価値を実現する栽培法の確立が喫緊の課題となっている。健康に良い機能性成分を多く含む高付加価値作物の生産には、これまでUV照射法が提案されている。これまでの申請者らの予備的な研究によって、UV照射のみならず、可視光領域の変動光照射によって、アントシアニン蓄積が誘導されることを示してきた。そこで、本申請課題では、UV照射と可視光領域の変動光照射が引き起こすアントシアニン蓄積量のメカニズムの違いを明らかにするとともに、高付加価値作物の新規栽培方法の提案を目指す。 初年度は、複数台の変動光照射システムを設置した。また、シロイヌナズナを材料に、可視光領域の変動光照射が葉のアントシアニン蓄積に及ぼす影響を解析した。変動光処理時の光強度や変動光の照射間隔によって、アントシアニンの蓄積の程度は異なったが、変動光処理によって、確かにアントシアニンが蓄積することを確認した。また、変動光の種類として、赤と青のLEDの交互照射が植物の成長やアントシアニン蓄積に及ぼす影響を定量化した(Ohtake et al. 2021 Environ. Control in Biol.)。つまり、照射のタイミングや強度を変えることによって、生産性と機能性成分を高めることが可能であることを示す。今後、UV照射と可視光領域の変動光照射が引き起こすアントシアニン蓄積のメカニズムの違いを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、複数台の変動光照射システムを設置した。また、シロイヌナズナを材料に、可視光領域の変動光照射が葉のアントシアニン蓄積に及ぼす影響を解析した。変動光処理時の光強度や変動光の照射間隔によって、アントシアニンの蓄積の程度は異なったが、変動光処理によって、確かにアントシアニンが蓄積することを確認した。 また、変動光の種類として、赤と青のLEDの交互照射が植物の成長やアントシアニン蓄積に及ぼす影響を解析した。赤系のリーフレタスを用いて解析したところ、赤と青のLED光の比率や照射時間によって、成長速度や色素蓄積に及ぼす影響が異なることを明らかにした(Ohtake et al. 2021 Environ. Control in Biol.)。つまり、照射のタイミングや強度を変えることによって、生産性と機能性成分を高めることが可能であることを示す。現在、UV LED照射システムを構築中である。今後、栽培環境における光合成特性や細胞内の活性酸素の蓄積量を経時的に解析する予定である。また、遺伝子発現の網羅的解析によって、UV照射と可視光領域の変動光照射が引き起こすアントシアニン蓄積のメカニズムの違いを明らかにしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はシステムのセットアップとその最適化に時間を要した。今後、赤系リーフレタス(レッドファイヤー)を用いて、UV照射(UV-LED)または可視光(白色LED)の変動光照射の処理を行う予定である。その際、処理期間は12 h、24 h、72 hの3つを設け、処理前と処理後のアントシアニンの蓄積量と生合成遺伝子(CHS, CHI, DFR)を解析する。また、アントシアニンの蓄積を引き起こす光合成電子伝達系の還元状態と活性酸素量、各種抗酸化酵素(SOD, CAT, APX, GR)の活性を総合的に評価する。これらによって、可視光の変動光照射が生育及びアントシアニン蓄積に及ぼす影響を明らかにし、UV照射による機能性成分の蓄積機構との違いを解明する。 また、赤系リーフレタス栽培法の確立後、予備的な実験としてゲノム解析が進んでいる赤ジソを用いた研究を展開する。赤系リーフレタスのみならず赤ジソを実験対象として、可視光の変動光照射の汎用性を評価する。赤ジソを実験材料にする際には、アントシアニンに加えて、薬用成分であるペリルアルデヒド、ロスマリン酸、そしてリノレン酸の定量も行う。
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Causes of Carryover |
変動光環境に対する時間差トランスクリプトーム解析を行う予定で、サンプル調整や解析依頼に一部の予算を割り当てていた。しかし、サンプリング時の変動光条件の最適化に時間がかかっており、現在、早急に変動光の条件を検討している段階にある。そこで、昨年度にトランスクリプトーム解析に割いていた予算を本年度に繰り越し、研究を加速させる予定である。
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