2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of a separation and quantification method for microplastics in agricultural soil and clarification of the actual contamination status
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20K21348
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
原田 直樹 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50452066)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 土壌 / 比重分離 / 緩効性肥料 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋では1970年代からプラスチックごみが沿岸部や海に流出し,生態系破壊や健康被害,沿岸部の経済社会の毀損などの原因として大きな問題となっている。特に最近,マイクロプラスチック(MPs)と呼ばれる直径5 mm以下のプラスチック小片による海洋生態系への影響が懸念され,早急に取り組むべき問題として世界的にも認知されている。 農業も肥料・農薬などの包装容器や農業用ビニル,マルチなど,プラスチック資材を多用する産業であり,海洋のMPsの排出源の一つに数えられている。加えて最近は,緩効性肥料の被覆樹脂が海浜で多く見つかっており,大きな関心が寄せられている。緩効性肥料とは,表面をプラスチック樹脂膜などで被覆し,土壌中での肥料成分の溶出を調整した肥料である。作物要求性に応じた窒素成分の溶出が可能となり,追肥不要で省力化が図れることから,重要な農業資材となっている。 農業から環境に排出されるプラスチックの特徴として,農業が盛んな特定の地域に排出が集中するという点が挙げられる。農地に混入したプラスチックは光分解や熱酸化分解などの物理作用や微生物作用による緩慢な劣化によって微細化し,MPsとなる。しかし,農地におけるMPsの集積や動態については,そもそも土壌中MPsの定量的な分析方法が確立されていないことから,あまり研究が進んでいない。 こうした背景のもと,本研究では,1) 土壌中のMPsを同定かつ定量する方法の確立と標準化,2) 実圃場でのMPs汚染の実態解明,の二つを目的とする。 2年目は,初年度に確立したキャノーラ油と塩化ナトリウム水溶液を用いた土壌からのMPsの抽出法が,水田土壌からの緩効性肥料の被覆樹脂の分離に適用できないか検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目は,初年度に確立したキャノーラ油と塩化ナトリウム水溶液を用いた土壌からのMPsの抽出法が,水田土壌からの緩効性肥料の被覆樹脂の分離に適用できないか検討した。砂丘未熟土(畑地土壌)とグライ低地土(水田土壌)を供試土壌とし,緩効性肥料から尿素を溶出させて得た原形試料を0.5%混合して添加回収試験を行ったところ,油分を増やすことで前者では94.8±1.4%(抽出操作2回の合計),後者では82.7±1.4%(抽出操作3回の合計)の回収率を得た(いずれも平均値±S.E.)。一方で緩効性肥料の破砕物を試料とした場合の回収率は不十分で,課題を残した。平行して緩効性肥料の培養試験を土壌中および水中で実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き水田土壌に残存する緩効性肥料の被覆樹脂由来のマイクロプラスチック(MPs)に焦点をあて,緩効性肥料の培養試験を継続し,その劣化過程を外観,肥料成分の溶出,被服樹脂の化学構造の変化等を指標に,温度や光などの環境要因と関連付けて調べる。さらに,新潟市内の海浜への緩効性肥料の被覆樹脂の負荷量の把握を目的とした現地調査を実施する。
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