2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K21354
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
松添 直隆 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (50239018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田川 裕之 熊本高等専門学校, 拠点化プロジェクト系地域協働プロジェクトグループ, 教授 (00250845)
大塚 弘文 熊本高等専門学校, 企画運営部, 教授 (10223869)
加藤 達也 熊本高等専門学校, 電子情報システム工学系CIグループ, 助教 (10707970)
高山 耕二 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (50381190)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 水田内 / 除草 / 小型 / ロボット / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は以下の研究を実施した。 (1)球体ロボットの雑草防除とイネの生育・収量に与える効果:市販の球体ロボット(直径7.3 cm、重量200 g)を使い、球体の回転により除草効果があること、生育・収量には影響しないことを実験水田で明らかにした。(2)球体ロボット(プロトタイプ)の製作:球体ロボットを設計・製作し、動作確認を行った。ロボットの大きさは直径12cmであり、透明の球殻に独立2輪駆動の車輪移動ロボットが入った構造である。左右のモータをマイクロコンピュータで制御し、直進や旋回などを組み合わせて前後左右に自在に移動できる。Bluetooth無線通信でマニュアル操作や直進と旋回をランダムに実行する自動走行モードを搭載した。(3)合鴨農法から見た球体ロボットに求められるもの:比較対象となるアイガモ雛は,0日齢の時点では水深5㎝であれば脚が地面に届き土壌撹拌が可能であること、7日齢の時点では水深10㎝でも土壌撹拌が可能であることが示された。(4)球体ロボットの性能評価: 球体ロボットはバッテリー駆動のため、走行速度・撹拌度・消費電力について、最適化する必要がある。ロボットの表面形状と回転速度を決定するためにはこれらを定量的に求める必要があり、その測定装置の作製を行った。撹拌度の測定には、ロボットが実際に回転し走行する際に生じる水流を画像処理によって測定することとし、透明水槽に高速度カメラを設置した装置を作製した。 (5)センシングや肥料・薬剤等の散布機能を有する円筒形水上ドローンのプロトタイプの開発:球体ロボットとは別に、ジェット水流による推進機構(スラスタ)を応用したロボットの設計とプロトタイプの作成に取り組み、水田を模した水槽実験により性能検証を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水田で市販の球体ロボットを稼働させることにより、稲の生育・収量に影響を与えず、雑草を抑制できることを証明した。ロボットの改善策の一つとして、直径12-15 cmに大型化することで、移動・活動率が高まると考えられた。そこで、プロトタイプとして、防水性に優れた球体の構造で直径12cmの球体ロボットを設計・製作し、動作確認を行った。また、その外側に水田の泥を攪拌し、雑草を浮き上がらせるため、突起のついたカバーを設計し、3Dプリンタで出力した。突起の大きさや数によって、攪拌能力が変化することが実験で確認できた。 球体ロボットの外枠の突起部分を3㎜と10㎜に設定した2つのロボットを水面で稼働させ、動作状況の比較から除草能力が高いと思われた後者を水田での除草試験に用いることにした。これに加え,球体ロボットの改良に向けた基礎データを得るために、0、1および2週齢のアイガモ雛を水深5および10㎝に設定した水槽内で水浴させ、その際の脚の動きや濁水の発生状況をビデオカメラで録画・解析した。プロトタイプの走行によって生じる水流を観測するために、全長1.8mのアクリル透明水槽の側面から高速度カメラにより水流を測定できる装置を作製した。その際、ロボットは実際の速度で移動させて測定するため、高速度カメラは可動レールに設置し、移動させながら撮影できるようにした。また、測定断面を特定できるように平面状に光を照射するレーザーを水槽底面に設置し、測定装置はほぼ完成した。 円筒形水上ドローンについて、直径14cmサイズのスラスタを装備したプロトタイプを製作し、地磁気センサによる進行方位制御による自立移動を実現した。スラスタの発生するジェット水流により球体ロボットと同等の泥土攪拌効果が得られることを実験検証により確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に開発した球体ロボットのプロトタイプの雑草防除に関する性能試験を実験水田や小型プールで実証実験を行う。 プロトタイプの改良・追加点として、①水田内をスムーズに移動するには推進力の向上が求められる。改善策としては、重心位置をさらに外側に調整し、トルクの大きいモータを搭載する。②充電スポットに自動的に帰ってくる仕組み、③リチウムイオン電池を用いた高効率のワイヤレス充電システムの開発、④球体ロボットの内部駆動体の完全防水化を目的にマグネットカップリングを採用し、モータを含む電気回路部を完全防水ケース内部に格納することで、駆動軸穴からの浸水問題を解決する。 プロトタイプについて、様々な表面形状のロボットの移動速度、水流、消費電力の測定を行う。一方、実際に雑草の除去特性を評価している班から、必要となる回転速度についての情報を得て、同等の撹拌度を得るための条件をロボット開発班にフィードバックすることで、除草特性・電力消費特性ともに優れたロボットの開発につなげる。 プロトタイプの水田内での除草能力を評価するために、田植え後10日間が経過した水田を除草しない対照区,アイガモを放飼するアイガモ区,球体ロボットを稼働させるロボット区を設ける。試験開始から21日間の小型球体ロボットによる除草効果を他の2区との比較から明らかにする。また、各区内にはアイガモまたは小型球体ロボットが侵入できないプロテクトケージ(ネットで囲うので濁水は入る状況)を作り,両者による土壌撹拌で生じる濁水が雑草発生に及ぼす影響も合わせて評価する。 円筒形水上ドローンのプロトタイプについては、スラスタ駆動による水上ドローンの小型化と高精度な移動方向制御システムの開発に取り組む。また同ロボットにセンシングや肥料・薬剤等の散布機能を持たせるための基礎設計を行う。
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Causes of Carryover |
小型球体ロボットの試作機の作成並びに試作機の性能の評価方法については、2020年度で行うことができた。しかし。野外の水田を使用した試作機の性能試験については、6月以降(採択前)にしか実施できない。水田での実験は2021年6月からの実施する。
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