2021 Fiscal Year Research-status Report
多種多様な脂肪酸種で構成されるリン脂質分子種の意義解明
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20K21379
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 淳賢 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20250219)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | リン脂質分子種 / リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ / LPGAT1 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
リン脂質は生体膜の主要な構成成分であり、受容体・トランスポーターなどの膜タンパク質の“足場”として機能すると考えられている。一方、近年、質量分析計の進歩から、生体内には極性頭部と含有する脂肪酸の異なる1,000種以上のリン脂質分子種が、細胞特異的に発現することが判明してきている。数千種もの膜タンパク質がオルガネラ特異的に存在している事実を加味すると、個々のリン脂質分子種がオルガネラ特異的に発現し、個々の膜タンパク質機能を調節するという仮説が提唱される。本研究は、質量顕微鏡技術と申請者が最近同定したリン脂質合成酵素(リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ, LPLAT)のKO個体、KO細胞の表現型解析と標的膜タンパク質の探索解析を通じ、どのリン脂質が、どの細胞で、どのような膜タンパク質を標的とし機能するかを解明する。 本年度、リン脂質の多様性を生み出すメカニズムとしてLPGAT1というLPLAT分子に着目し、そのゼブラフィッシュ変異体を用い、LPGAT1、さらには、LPGATが産生するリン脂質分子の機能解明を目指した。LPAGT1 KOゼブラフィッシュは二つの表現型を示した。一つ目は、発生停止であり、Lpgat1 KOゼブラフィッシュの成体を得ることができなかった。受精後14日後までは、Lpgat1 KOゼブラフィッシュは存在したが、受精後30日後以降は、Lpgat1 KOゼブラフィッシュは得られなかった。二つ目は、精子の卵子との融合異常であった。Lpgat1ヘテロゼブラフィッシュ雄と野生型雌で30-40%の受精卵の発生が進まず、受精異常を起こすことが判明した。Lpgat1 KOゼブラフィッシュ胎児、Lpgat1ヘテロゼブラフィッシュ精子では、18:0-22:6ホスファチジルエタノールアミンのレベルが大きく減少していた。 以上より、LPGAT1により産生される特定のリン脂質分子種(18:0-22:6ホスファチジルエタノールアミン)が特定の役割(精子機能、発生段階における機能)を持つことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LPGAT1 KOゼブラフィッシュの解析を通じ、LPGAT1さらには特定のリン脂質分子種の機能を解明でき、論文も掲載され、研究目的の主要な部分は達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
LPGAT1 KOマウスは、網膜変性、心不全、筋機能低下等の多様な異常を示している。これらの表現型の責任細胞、責任脂質を同定、RNAseq解析等の手法を用い、特定のリン脂質分子種の機能解明をさらに目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ渦中での研究の進展が若干遅れていたのに加え、研究室で火災が発生し、研究の進行が著しく遅れたため。
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