2022 Fiscal Year Annual Research Report
多種多様な脂肪酸種で構成されるリン脂質分子種の意義解明
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20K21379
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 淳賢 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20250219)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ステアリン酸 / リン脂質 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではリン脂質グリセロール骨格のsn-1位に特定の脂肪酸を有するリン脂質分子種の形成機構とその機能の解明を目指した。最近我々は、リン脂質のグリセロール骨格のsn-1位にステアリン酸(C18:0)を導入する活性を有するLPLATとしてLPGAT1/LPLAT7を同定し、培養細胞レベル、動物個体レベルでの解析を進めている。今回、C18:0含有リン脂質の細胞レベルでの機能を解明する目的で、LPGAT1を機能抑制時の細胞機能を解析した。 LPGAT1の機能抑制を行い、各種オルガネラを観察するとミトコンドリアの断片化が観察された。また、C18:0を含有する複数のホスファチジルコリン (PC) 及び ホスファチジルエタノールアミン(PE)分子種の低下が確認された。単離ミトコンドリアでも同様のリン脂質の組成変化が観察された。同様の変化はCRISPR-Cas9システムを用い作製したLPGAT1欠損ヒト培養細胞でも観察された。LPGAT1発現抑制細胞では、ミトコンドリアの分裂因子であるDrp-1のミトコンドリアへの集積が観察された。また、C18:0含有LPCやLPEの添加により断片化の表現型が有意に回復した。同時に、添加したC18:0含有LPCやLPEがアシル化されたさまざまなC18:0含有PCやPEが検出された。 C18:0含有リン脂質低下はミトコンドリアの断片化を引き起こすことが示唆された。C18脂肪酸を合成する脂肪酸伸長酵素ELOVL6の変異ショウジョウバエ細胞でミトコンドリアの断片化し、この断面化はステアリン酸(C18:0)の添加で回復することが報告されており、今回の結果より、ステアリン酸はリン脂質に取り込まれ機能している可能性が高い。C18:0含有リン脂質がミトコンドリア分裂因子であるDrp-1機能をどのように調節しているかを明らかにすることが今後の課題であるが、Drp-1は飽和型リン脂質への親和性が高いことも報告されており、現在、リポソームへのDrp-1の結合実験をさらに進めている。
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