2020 Fiscal Year Research-status Report
Microdomain dynamics in the inner leaflet of plasma membranes as revealed by super-resolution microscopy and single-molecule imaging
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20K21387
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
鈴木 健一 岐阜大学, 糖鎖生命コア研究所, 教授 (50423059)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 超解像顕微鏡法 / 1分子イメージング / 脂質ドメイン / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1分子蛍光観察と高速超解像顕微鏡観察を組み合わせた超高精度のリアルタイムイメージング法により、生きている細胞の形質膜内層での脂質分子の分布とその変化、ラフト形成の有無、飽和脂肪酸修飾されたシグナル伝達分子の分布とその変化を明らかにし、膜内層の脂質によるシグナル伝達場形成などの膜動態を解明することである。これにより、脂質研究をアーチファクトから解放し、非常に基本的な知見であるにも関わらず、その膜構造はおろか脂質組成すら曖昧であった形質膜内層やシグナル伝達場の解明を目指す。 今年度、様々な脂質の結合タンパク質にブリンキングする蛍光分子を標識したものを細胞に発現させ、それらを高速蛍光1分子観察することにより、生細胞の形質膜内層での超解像観察を行った。発現するタンパク質や蛍光分子の濃度を調整することで、超解像顕微鏡観察に十分な蛍光輝点密度を得ることに成功した。観察の結果、調べた脂質のいずれもが、非常に小さなドメインを形成していたが、それらは安定ではなく、生成と消失を繰り返していた。 次に、2色同時観察のために、2種類の脂質結合タンパク質を細胞に共発現させた。この場合も、発現するタンパク質や蛍光色素の濃度を調整し、輝点密度が十分になるようにした。さらに、試行錯誤の末、超解像顕微鏡観察して得たドメイン同士の共局在の新しい解析法を作成した。現在、2色観察の実験結果を解析しているが、予備データとしては、脂質ドメイン同士の親和性に顕著な差がみられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、本研究の目標は、生細胞の形質膜内層での脂質がドメイン形成するかどうかを超解像顕微鏡観察で検証し、もし形成していれば、その変化を観察することである。今年度、7種の脂質結合タンパク質の超解像観察に成功し、いずれの脂質も微小なドメインを形成し、しかも、安定ではなく短寿命であることを見出した。第一の目標を達成したと言える。さらに、2色同時観察により、2種類の脂質ドメインの共局在解析にも挑んだ。その際、細胞内での発現レベルが超解像顕微鏡観察に十分になるように調整を行った。また、脂質ドメイン同士の共局在を解析するためのソフトウエアを開発した。ただし、当初見込んでいたよりも、解析にずっと長時間かかることが判明したため、解析環境を整えた。これにより、当初よりも解析時間を短縮することに成功した。予備的データも得られていて、脂質ドメイン同士の親和性は、脂質によってだいぶ異なることが示唆された。従って、これまでのところ、当初の実験計画通りに進んでおり、順当だと言える。今度のさらなる研究により、脂質ドメインの物性や役割の理解が急速に進むかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後まず、脂質ドメインがラフトであるかどうかを検証していく。そのため、ラフトマーカーの脂質結合タンパク質を用いて、ドメイン形成と共局在解析を行う。次に信号伝達分子のドメインでの滞在時間、リクルート頻度などを1分子観察と超解像顕微鏡観察を同時に行うことにより、明らかにしていく。このリクルートがみられた場合、脂質相互作用依存的かどうかを検証していく。コレステロール除去後や導入後、あるいは特定のリン脂質の脂肪酸鎖長や不飽和度を改変した細胞株を用いて、脂質組成を改変後、信号伝達分子の脂質ドメインへのリクルートを観察していく。これらの実験によって、細胞形質膜内層における信号伝達場の直接的な可視化を行い、信号伝達強度の調節機構を解明していきたい。
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