2020 Fiscal Year Research-status Report
細菌のPUP化を応用した真核細胞のユビキチンリガーゼ基質同定法の確立
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20K21401
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
西頭 英起 宮崎大学, 医学部, 教授 (00332627)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
老化や変性疾患でしばしば観察されるユビキチンプロテアソームシステム(UPS)の機能低下あるいは破綻は、不良タンパク質を蓄積させ神経変性疾患などのコンフォメーショナル病の発症に繋がるため、その理解は重要な研究課題である。しかし、UPSにおいて「分解される不良タンパク質のユビキチン(Ub)化に特異性はあるのか?」あるとすれば「その特異性の法則は?」といった疑問が未解明である。これらを解決すべく本研究では新規Ub化基質同定法の開発を実施している。これまでUbリガーゼE3の基質同定法は、遺伝子欠失による必要性に基づく解析が中心であった。しかし、哺乳類の700種類にのぼるユビキチンE3リガーゼには、遺伝子欠損した際に代償性があるため、必ずしもE3リガーゼと基質の生理的関係を反映しているとは言えない。そこで、必要性に基づく解析ではなく、細胞内でE3によって実際にユビキチン化されるタンパク質を直接検出する技法が必要であるとの着想に至り、本研究を立案し、推進している。具体的には、原核生物に特有なPupとリガーゼPafAによるpupylation(Pup化)を本研究に応用する方法を確立する。具体的には、哺乳類細胞において特定のE3によってUb化される基質を同時にPup化し、E3特異的な基質を網羅的に解析する技法を確立するため、R2年度は、大腸菌PupとPafAをクローニングし、細胞の安定的発現株の樹立を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
原核生物版UPSとして同定されたPupとPupリガーゼPafAを利用するため、両者をクローニングした。ATP存在下でPafAは、基質のリジン残基にPupを共有結合させる。その反応は真核生物のUb化と共通だが、E1、E2、E3を必要としない。従って哺乳類細胞に、baitタンパク質-PafAの融合分子とPupを発現させるだけで、prey分子をPup化できる。その際、BCCP(biotin carboxyl carrier protein)タグを付加することでPupをbiotin化(BioPup)しavidinでプルダウンする。HRD1は、ストレス誘導性のため、過剰発現ではなくPafA配列をC末端にノックイン(KI)したHRD1-PafA細胞を樹立することで、生理的条件下で内在性Ring領域によりUb化され、かつPafAによってPup化された基質を人工的に作出した。また、基質認識の差異を明確にするため、HRD1-PafAKIマウスを作製した。さらに、E3基質の網羅的同定法の確立:HEK293、HeLa細胞を用いて、Corynebacterium glutamicum由来PafA遺伝子をCRISPR/CasによりHRD1-C末端に導入したKIヘテロ細胞を樹立した。Tet-onシステムでBCCP-Pupを発現させることに成功した。従って、当初の予定以上の進捗が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、HRD1によるストレス依存的なUb化分子の同定を試みる。既に同定したHRD1によるUb化分子群について、小胞体ストレス、様々な細胞質ストレスによるUb化変動を解析する。in vivo E3基質の網羅的同定法の確立としては、臓器、病態モデル特異的なHRD1基質の同定を目指し、前年度に確立するHRD1-PafAとBioPup発現システムによるKIマウスを樹立する。 以上により、小胞体ストレスによって発現誘導され小胞体不良タンパク質のUb化に寄与するERAD必須因子HRD1によるストレス依存的な基質同定を可能にするとともに、他のERAD-E3を網羅的に解析し、小胞体膜近傍でのUPSによる分解システムの全容解明を目指す。
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