2021 Fiscal Year Research-status Report
RNA高次構造ダイナミクスを介した植物環境応答システムの解明
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20K21415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大谷 美沙都 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60435633)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | RNA高次構造 / 植物環境応答 / 温度依存性 / RNAサーモメーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物のロバストな細胞形質発現を可能にする環境応答システムとして「RNA高次構造ダイナミクス」に着目し、温度依存的なRNA高次構造ダイナミクス情報の新規取得、さらには、植物における「RNAサーモメーター」の同定を目指して解析を行っている。以下が2021年度の成果である。 1. 22℃、28℃の温度条件で育てたシロイヌナズナ芽生えに関するトランスクリプトームデータの比較解析、さらにはRNA代謝制御異常変異体のトランスクリプトームとの比較解析を進めた。この結果、6℃の温度条件変化によって起こる遺伝子発現量およびpre-mRNAスプライシングパターンの異常を多数例抽出することに成功し、とくにスプライシング変異体では、温度依存的にオーキシン関連遺伝子のmRNA代謝が大きく変化することが明らかとなった。 2. 細胞ストレス依存的にスプライシング異常が起こる遺伝子について、DMS-qPCR解析を進めた。この結果、温度変化や細胞ストレスによってRNAの二次構造変化が起こっていること、さらにこの構造変化によってスプライソソームが本来の認識部位領域にアクセスできなくなり、結果としてスプライシング反応が阻害されていること、を示唆するデータを得た。 オーキシン関連遺伝子群は、選択的スプライシング、miRNAによる翻訳・分解制御、uORFを介したNMDによる分解制御、など多面的なRNA代謝制御のターゲットとなっていることが知られている。以上から、オーキシン関連遺伝子群の中に植物「RNAサーモメーター」の候補が多く含まれている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノムワイドにRNA構造情報を得るためのDMS-seqについては、実験条件を変更する可能性が生じたため、一部実験が次年度に持ち越しとなっている。しかしながら全体としては2021年度は概ね計画通りに進展したため、上記の判断を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りゲノムワイドなRNA構造解析とそのダイナミクスの解明を進めつつ、新たにmRNA分子の可視化システムを立ち上げ、細胞形質との関わりを多角的に解明する予定である。
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Causes of Carryover |
ゲノムワイドにRNA構造情報を得るためのDMS-seqについて、実験条件を変更する可能性が生じたため、一部実験が次年度に持ち越しとなったため、次年度使用額が生じた。2022年度に合わせて使用し、計画通りDMS-seqを完了する予定である。
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Research Products
(7 results)