2020 Fiscal Year Research-status Report
栄養素を介した根と地上部の間の概日時計のフィードバックループの存在と意義
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20K21428
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
遠藤 求 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80551499)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 概日時計 / シロイヌナズナ / 長距離シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、カリウムやマグネシウムなどの栄養欠乏条件下では地上部の概日リズムの周期安定性が低下し、周期長のばらつきが増大することを我々は明らかにしてきた。 本年度の研究において、申請者らは、栄養素の取り込みは地上部の概日時計によって制御されていることが示されたことから、根と地上部の相互作用こそが、概日リズムの周期安定性を生み出している鍵であると考えた。そこで、こうした器官間の相互作用が概日周期の安定性に果たしている意義を明らかにするため、数理モデルを作ることで、擬似的に地上部→根と根→地上部の結合の強さを調節し、その時の概日リズムの安定性を評価した。 地上部と根の間に両方向の相互作用がある場合、これまでの観察と同様に、地上部の概日周期はノイズに安定であり、個体間での概日位相のばらつきは低く抑えられていた。一方で、地上部と根の相互作用を完全に遮断し、それぞれの概日振動子が独立であるとき、地上部はノイズの影響を強く受け、概日周期の安定性が速やかに失われることを確認した。さらに、地上部→根あるいは根→地上部のいずれか一方の結合を切ると、概日周期の安定性は中間的な表現型となり、これらの結果はいずれも実験結果と概ね一致していた。 以上のことから、これまで根の概日リズムは地上部に完全に従属的であると考えられてきたが、地上部は根を経由することで自身の概日周期の安定性を高めていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションにより、地上部と根のそれぞれの振動子が結合することで、外部からのノイズに対して頑健性が向上することが確認され、実験的に得た結果と一致していたことから、地上部と根の間の相互作用が概日リズムの安定性を生み出しているという主張はかなり支持された。当該年度に予定していた研究内容はほぼ達成済みであり、結果も良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での成果をまとめるため、今後、足りないデータの取り直しや論文執筆等を中心に行い、年度前半の投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度は主にシュミレーションを行ったため、当初想定よりも消耗品の利用が少なかった。2021年度は実験がメインとなる予定であり、昨年度よりも実験試薬や消耗品の購入額が増える予定となるため、そこに充当する。
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[Journal Article] Na+/Ca2+ exchanger mediates cold Ca2+ signaling conserved for temperature-compensated circadian rhythms.2021
Author(s)
Kon, N, Wang, H, Kato, Y.S., Uemoto, K., Kawamoto, N., Kawasaki, K., Enoki, R., Kurosawa, G., Nakane, T. Sugiyama, Y., Tagashira, H., Endo M., Iwasaki, H., Iwamoto, T., Kume, K., Fukada Y.
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Journal Title
Science Advance
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed
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