2020 Fiscal Year Research-status Report
生殖顆粒の動態を制御する転写制御因子:相分離制御におけるミトコンドリア関与の検証
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20K21430
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中村 輝 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (90323245)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 生殖細胞 / 生殖顆粒 / 転写コアクチベーター |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖細胞は遺伝情報を次世代に伝搬する細胞種である。生殖細胞固有のオルガネラとして生殖顆粒が知られている。生殖顆粒は生殖細胞の形成・維持に必要な因子が集積したRNA顆粒である。ショウジョウバエ卵形成過程において、生殖顆粒は哺育細胞の核膜周縁部に形成されるヌアージと卵母細胞後極の生殖質に形成される極顆粒という2つの形態を取る。2つの顆粒の機能は異なるが、両者の構成因子はよく保存されている。従って、形成・維持には共通した制御機構の存在が予想される。しかし、詳細は良くわかっていない。私たちはノックダウンにより極細胞の形成に異常をきたす母性遺伝子として、spargel (srl)を同定した。Srlは転写コアクチベーターであるPGC-1のホモログである。哺乳類においてPGC-1はミトコンドリア機能に関わる遺伝子の発現を制御する。 私たちは、srlのnull変異体を作成し、その表現型解析を進めた。その結果、srl-null卵巣において、生殖顆粒を構成するVasa, Tudor, Aubergineタンパク質は卵形成初期の哺育細胞核膜周縁部に局在するが、その後シグナルが激減し、生殖質へのシグナルはほとんど観察されなかった。貯蔵RNAを大量に含む成熟卵を含まないように注意して調整した卵巣より抽出したRNAを用いてRNA-seq解析を行った結果、vasa mRNAレベルが低下していることが判明した。さらに、srl-null卵巣においてvasa遺伝子を過剰発現した結果、VasaやTudorタンパク質のヌアージへの局在は回復した。一方、生殖質のシグナルは回復しなかった。これらの結果から、Srlはヌアージと極顆粒という2つの生殖顆粒の形成に異なった経路で関わっている事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq解析など概ね順調にデータは得られている。Srlによる生殖質因子の生殖顆粒への集積異常に関しても、標的の候補は得られている。一方、srl-null卵巣におけるミトコンドリア活性を検討するためmitotrackerなどを用いた生体染色を試みているが、濾胞細胞に包まれている卵母細胞への浸透性が悪く、さらなる工夫が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
ChIP解析を行うために3xFLAGおよび3xTy1でタギングしたSrlのノックイン系統、GAL4/UASシステムによる過剰発現系統の作成は完了している。今後、条件検討を開始する。さらに、Srlと共同して働く転写因子候補であるEts97D遺伝子についてもnull系統を作成し、表現型解析を開始している。 一方、生殖質因子の生殖顆粒への集積異常に関わる候補が得られているが、転写コアクチベーターがどのように関わるのかの分子機構については、アイデアを深める必要がある。
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