2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21457
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 隆太 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (90431890)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ミクログリア / 貪食 / 血管 / 赤血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内免疫細胞であるマイクログリアは、脳内に侵入した異物や死細胞などを貪食・除去することで発達や恒常性に寄与する。被貪食物の消化を担うリソソームは、リソソームマーカーであるCD68により可視化され、通常はマイクログリア内部で不規則な形状で存在している。しかし、生後初期のマウス脳内においては球状のCD68が集積した葡萄のような構造物が局所的に存在することを発見した。我々はこの特徴的な未知の構造物をBUbbly Dense Organizationまず時空間的分布を詳細に検証した。BUDOは全脳に広く分布していたが、特に脳表付近や側脳室横に多く見られる傾向があった。またBUDOは、生後0, 7,14日齢のマウス脳内には存在したが、60日齢では存在しなかったことから、発達期に特有の構造であることが示唆された。さらに我々は、BUDOの内部やその周辺領域に、赤色の自家蛍光が常に存在することを発見した。自家蛍光を持つ生体由来の物質として血液を想定し、以降はBUDOが血液漏出に応答した構造であるという仮説を検証した。まず、赤血球の抗体染色を行なったところ、自家蛍光部位特異的に赤血球が漏出しており、その一部はBUDO内部に取り込まれている様子が観察された。そこで、生理条件下ではBUDOが存在しない成体マウスの脳内に血液を投与したところ、投与領域周辺に赤血球が集積するとともに、BUDOが誘導された。以上の結果から、BUDOに見られる葡萄のような形態のCD68は、マイクログリアが赤血球を貪食することで形成される構造であることが示された。本研究より、生後初期脳内において未成熟な血管から脳実質への血液漏出が生じており、それにマイクログリアが応答して赤血球などを貪食・除去することで、正常な脳発達に寄与していると考えられる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、生後初期マウス脳内において、葡萄のような形態をとるマイクログリアが散見されることを発見した。本研究の主要な目的の一つは、その構造形成の原因であった。そして、我々は、これまでに、この葡萄様構造は、生後初期脳内で生じる出血(赤血球)に応答したマイクログリアが形態を変化させた構造であることを明らかにした。さらに、現在は、赤血球貪食の不全を誘導したマイクログリアにどのような変化(遺伝子発現変化及び機能変化)が起こるかを検証する段階に到達している。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、「免疫記憶」という機能が多くの注目を集めている (Wendeln, Neher, Nature 2018)。WendelnらはマウスへのLPSの投与により、免疫訓練または免疫寛容という双方向の変化が6ヶ月後においても生じていることを、サイトカイン量やマイクログリアの形態、遺伝子発現により示している。つまりマイクログリアは特定の刺激を受けることでその後の自身の機能を長期的に変化させることができる。我々は、赤血球貪食もまたマイクログリアのその後の機能を変化させる可能性があるのではないかと考えた。現時点では、赤血球を貪食するという経験を得たマイクログリアは、貪食能などの機能がより増強する可能性を考えている。これを検証するため、マイクログリアにおける赤血球貪食能力を不全にした遺伝子改変マウスを用いた実験を行う予定である。
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