2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21460
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上野 将紀 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40435631)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 脳脊髄液 / 神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳脊髄液に接する未知の細胞である脳脊髄液接触ニューロンのもつ細胞構造や神経回路網、機能を明らかにすることを目的としている。この細胞は、脳脊髄液と接して広く分布していることから、脳の内外の生体環境の情報を含有する脳脊髄液の情報を感知して、中枢神経系の神経回路内へ伝達することができる重要な細胞群であると想定される。しかし、その機能や実体はほとんどわかっていないのが現状である。本年度は、これらを明らかにする第一段階として、同ニューロンを可視化する方法を探索し、その条件を確立することに成功した。まず、同ニューロンのマーカーを探索して作製した抗体を使い、免疫染色を行なったところ、組織学的な観察で同ニューロンを検出することができるようになった。また緑色や赤色の蛍光タンパク質を発現させることで、細胞全体を標識することが可能となった。以上の方法について、組織学的な観察や組織透明化法を組み合わせることにより、細胞構造の大枠を明らかにすることができた。さらに各種のニューロンマーカーを用いた免疫染色を同時に行うことにより、同ニューロンが持つ神経化学的な性質の一部も明らかにした。これらの研究成果で得た基本的な細胞構造とその性質を元に、次のステップとして、同ニューロンが持っている神経回路網や機能を探索する研究へ展開することが可能となった。本成果は、生体-神経間を連絡する新たな細胞・生体メカニズムの理解へつながるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、脳脊髄液接触ニューロンの細胞構造、神経回路網、機能、の解明を目指しているが、本年度は、組織学的観察や組織透明化により、本ニューロンを効率よく可視化する方法を見出すことができ、細胞構造を明らかにする研究項目をおおむね達成することができた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに見出した細胞構造と性質を足がかりに、遺伝子改変マウスや神経トレーサーを駆使して、本ニューロンが持つ神経回路網を組織学解析により明らかにする。またこれらのニューロンの選択的な除去や神経活動の操作をする方法を確立して、機能探索をするための実験系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究をスタートする開始月が遅れたため、研究対象のニューロンを可視化する方法は確立できたが、電子顕微鏡解析など、細胞構造の理解の精度をさらに高めるための実験については、条件検討のところまでで本年度は終了となった。また研究の進展具合と新型コロナウイルスの情勢から、学会への参加は次年度以降へと計画を変更した。以上の理由から、次年度への使用額が生じた。次年度では、細胞構造をより詳細に明らかにするための組織解析用の試薬や実験用動物、旅費に使用する計画である。
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