2020 Fiscal Year Research-status Report
液液相分離内のタンパク質の構造および分子間相互作用のラベルフリー直接計測
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20K21468
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中林 孝和 東北大学, 薬学研究科, 教授 (30311195)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 液液相分離 / ラマンイメージング / 紫外共鳴ラマン散乱 / 水 / タンパク質 / 定量 / FUS |
Outline of Annual Research Achievements |
液液相分離によって生じたタンパク質の液滴について、紫外共鳴ラマン散乱などのラマン分光を用いて分析する新規手法を提案する。ラマン散乱は分子の構造を直接観測することができ、ラベルフリーで分子の情報を得ることができる。今年度は、タンパク質の液滴を作成し、水のラマンバンドを強度標準とすることで液滴内のタンパク質濃度、構造、そして周囲の環境依存性について検討した。タンパク質として筋萎縮性側索硬化症関連タンパク質であるFUSのLC (Low-complexity) 領域 (FUS-LC) を用い、大腸菌を用いた大量発現と精製を行った後、水溶液中でpHを急激に変化させる方法を用いて液滴の作成を行った。可視のラマン顕微鏡を用いて液滴の測定を行うと、液滴内のみでタンパク質のラマンバンドが観測され、ラベルフリーで液滴内でのタンパク質の局在を検出できた。液滴外にある水のラマンバンドを強度標準として液滴内のタンパク質の濃度定量が行えることを我々は提案している。FUS-LCについては、C-H伸縮バンドを用いて濃度定量を行い、pHを変化させると、pHが大きくなるにつれて液滴内のFUS-LCの濃度が減少することがわかった。さらに試料調製時のFUS-LCの濃度を変化させると今度は濃度の変化はなかった。これらの変化は2成分系の相図に従っており、ラマン散乱を用いて濃度変化の定量をラベルフリーで行えることがわかる。液滴形成の場合と形成しない場合においてラマンスペクトルの形状には変化は無く、特にタンパク質の二次構造を反映するアミドIバンドは同一であった。液滴を形成しても顕著な二次構造変化が生じていないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FUS-LCの液滴の作成と可視域のラマン測定、濃度定量、構造についての知見を得ることができた。得られた知見をもとに紫外域に拡張できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は作成したタンパク質液滴を用いて紫外域のラマンスペクトル測定を行う。二次構造については可視域のラマン測定で得ることができた。紫外域ではチロシンなどのアミノ酸残基のピーク位置の変化から分子間相互作用について検討する。
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